「財政の崖」悲観論に誤解はないか!?
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今年も米株は15日まで急落しました。ただ、それだけなら、「崖」懸念によるのか、それとも例年通りの動きかはわかりません。もしも例年通りなら、実は米株下落リスクはすでにピークを過ぎている可能性もあるわけです。そのような見方に立てば、感謝祭前の安値、15日の水準をこれからさらに大きく割り込むかが、「崖ショック」の本当の影響を見極めるうえでの目安になるでしょう。
◆「崖」回避、年内決着説は楽観的過ぎるのか?
それにしても、この「財政の崖」が実現してしまうなら、大変なことには違いありません。ただ、そんな大変なことだけに、さすがに「崖」は最終的には回避されるだろうし、それどころか「崖」回避の米政権と議会の合意が年内にも成立する可能性が出てきた、との見方も専門家の間で浮上し始めているようなので、次にそれをご紹介します。
「崖」回避における最初のハードルは、議会共和党がブッシュ減税終了に伴う富裕層への増税を受け入れるかということです。これに対して、民主党オバマ政権側は、政権が重点課題として取り組んでいるメディケア問題で、共和党側に譲歩することでのバーター取引を模索しているとの見方が一部で取り沙汰されています。
大統領選挙終了後に行われた政権と議会の財政協議では、民主、共和両党の指導者たちから、早期合意に向けた前向きな発言が相次ぎました。その一方で、具体的内容についての発言はほとんどなかったのですが、実はこれが一つのポイントかもしれません。
さきほど述べたような共和党の富裕層増税、民主党のメディケアでの妥協といった具体的内容は、ともに両党の政策において本質的な位置を占めるものだけに、表沙汰になるとそれぞれの党内から反発が噴出し、交渉が進めにくくなることが懸念されます。
そのように考えると、両党指導部が、合意に向けて楽観的な発言をする一方で、具体策に触れないのは、それだけ早期合意へ向けた強い覚悟を示しているとの解釈もできるものです。
それぞれの党内の反発も予想されるなかで、クリスマス休会前に民主、共和両党が合意できるかは決して簡単ではないでしょうが、少なくとも選挙前よりその可能性は出てきたと見られているわけです。(了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
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今週に入ってから、いわゆる「財政の崖」懸念相場再燃といった声が目立ってきました。「崖」問題の主舞台になっている米議会が感謝祭休会明けで再開したので、それも当然でしょう。問題は、この「崖」懸念がどれだけ深刻か、ということですが、一つの目安は感謝祭前の安値、15日に記録したNYダウ1万2542ドルを大きく割り込む動きになるか、ではないでしょうか。
◆11月米株安の本当の理由とは?
<資料>のように、米株は「崖」問題が関係のない昨年までも、11月は下落が目立っていました。その意味では、「崖」問題とは別に、期末要因などそもそも11月は株が下落しやすい理由があったと考えられます。そして、そんな11月株安は、<資料>のように、昨年までは感謝祭前で終っていたのです。
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