100坪の土地をタダでもらう方法
100坪を超える土地がタダでもらえる、そんな夢のような話がこの狭い日本で本当にあるという。給料は頭打ち、ボーナスだって雀の涙、資産を呼べるものなど皆無という人が少なくないこのご時勢、いったいぜんたい、なぜそんなことがありえるのだろうか。事の次第を調査した。
北海道東部根室振興局管内標津郡にある標津町。日本有数の鮭の産地として知られるこの地で、例の“土地のプレゼント”が行われているという。過疎高齢化対策として、町では移住促進政策「北のふるさと移住計画」を実施。「3年以内の住居の完成、移住」などを条件に100坪超の宅地の無償分譲を行ったり、「住民登録と3年以上の居住」などの条件を満たすと町職員住宅を改修したうえで賃貸、さらに10 年間居住しさらに引き続き定住の意思がある場合は当該住宅を無償で譲渡する事業を行ったりしているとのことだ。「お試し暮らし体験」など、いきなり移住に不安を抱えた人向けへのイベントも随時開催をし、より多くの人に村に関心を持ってもらおうと力を入れている。
背景には、20~30代を中心とした若者の田舎暮らし志向の高まりがある。進学や就職のため都市部に一度出てきた人が故郷に戻り、生活する「Uターン」に加え、都心部で生まれ育った人が、地方の企業に転職する「Iターン」組の増加も昨今の特徴だという。また最近では新たに「Jターン」という言葉もあり、都心部に出てきた地方出身者が、元の生まれ故郷とは異なる地方に移ることを指すとのこと。
「Jターン」が増えている理由には、自然豊かな環境や気候の良さ、子供の教育や自身の老後など地方暮らしにメリットを見出し、都市部を離れることを決めたものの、現実的には自身の出身地に雇用やインフラで不安があるため一定の生活基盤がする地域を探し、そこに住むというケースが多いようだ。そんな若者の意識の変化を受け、深刻な過疎高齢化に悩む地方自治体もさまざまなプランを立ち上げ、地方暮らしに関心にある都市部在住者を取り込もうと試行錯誤を行っている。
「住」の面で目を引く標別町に対して、「職」への支援では島根県隠岐郡海士町が注目を集めている。隠岐諸島の島前三島のひとつ・中ノ島に位置するこの町には、現在、多くの移住希望者が集まっているという。「平成の大合併」のさなか、単独町としての存続を望んだ同町は、住民代表と町議会と行政が一緒になって、島の生き残りを掛けた「自立促進プラン」を策定、公務員給与カットをはじめたとした財政改革とともに、町のブランド化を図り、移住と観光に注力した施策を打ってきた。
そのなかでもユニークな取り組みとして話題を集めたのが「海士ファンバンク」。海士町に移住して事業を行うことを希望する町外在住者へ資金を提供してもよいというスポンサーを全国から募集し、出資金を集め、金銭面での支援を行う。 出資者に対し、年4回、海士町の特産品を送ることで利子のかわりとし、一定期間経過後、貸付金の返済を行う。仮に事業が頓挫し返済ができなくなった場合、海士町が損失を保証するというものだ。そのほかにも移住希望者、住民、町外在住だが海士町を支える意思を持つ人のため多様な事業を同町では継続的に行っている。
無論、地方移住といってもいいこと尽くめではない。都会のような生活を望むのは難しいうえ、雇用状態も都市部に比較すると圧倒的に悪い地域がほとんどだ。またその地域独特の慣習に馴染めず都市部に逆戻りしてしまうというケースもあるという。地方への移住を考える人は、デメリットまで引き受ける覚悟をしっかりと決めたうえで行動する必要があるのだろう。
●標津町 北のふるさと移住計画
http://www.shibetsutown.jp/ijyuu/
●海士町
http://www.town.ama.shimane.jp/
写真/sendaiblog from flickr
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