アベノミクス相場を操る「120日線トレード」
6月に円高、株暴落となって「アベノミクス相場も終わりか?」といったムードになったのも、これまでのところは一時的にとどまった形となっています。ただ、アベノミクスの株高、円安と密接な関係のある、その意味ではアベノミクス相場を操っているとも言えそうな「ある動き」が、実は6月を再現しかねなくなり始めているのです。
◆アベノミクス相場をリードするHF「120日線トレード」
<資料1>でしょう。これはドル円のチャートに、120日移動平均線を重ねたものです。120日移動平均線とは、過去120営業日の平均値をグラフ化したもの。
※<資料1>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=474098
これを見ると、アベノミクスの株高、円安とされた動きは、ドル高・円安がこの120日線を越えて推移した時期とほぼ重なっていたことがわかるでしょう。そして、株暴落、円急騰となり、「ついにアベノミクス相場も終ったか!?」との声が強まったのは、その120日線を一時的に割り込んだ時期だったわけです。
こんなふうにアベノミクス相場を「操ってきた」ともいえる120日線は、今週は97円程度で推移しています。これまで見てきたことからすると、この120日線より本格的なドル安・円高に向かう動きになるようなら、そんな円高を嫌気し、株も急落不安が再燃する可能性があるため、「今度こそアベノミクス相場は終わった!?」といった声が高まる可能性がありそうです。
なぜこんなふうにアベノミクス相場の評価は120日線との関係が強いのでしょうか。それは、この120日線を、特に為替市場のリードオフマンであるヘッジファンド(HF)が重視している影響が大きいでしょう。
<資料2>は、そんなヘッジファンドの取引を反映しているとされるCFTC統計ですが、120日線ブレークのタイミングは、売買の転換点とおおむね重なってきました。
※<資料2>はコチラ⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=474099
要するに、昨年秋から一直線のドル高・円安となり、それと連動する形で日本株の記録的な上昇となったのは、ヘッジファンドなどが積極的なドル買い・円売り戦略を展開したことが一因で、それは120日線よりドル高・円安になったからでしょう。
そして、その120日線を、6月に一時的にドルが割れると、ヘッジファンドはドル売り・円買いに動き、それによって円安、株高のアベノミクス相場は窮地に立たされたということでしょう。
さて、そんな120日線が今週は97円程度で推移しています。この先、120日線よりドル安・円高が本格化したら、円安、株高「アベノミクス相場」のリード役となったヘッジファンドがドル売り・円買いに転換することで、アベノミクス相場の終焉説が再燃する可能性は注意が必要ではないでしょうか。(了)
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
●ツイッター http://mobile.twitter.com/yoshida_hisashi
●毎週動画 http://www.m2j.co.jp/fx_channel/
●FXの学校「アカデミア」 https://www.m2j.co.jp/mp/my_fxacademia/
アベノミクスの株高、円安とされる動きは、昨年12月の総選挙前から始まったとされます。アベノミクス相場が、「ついに終わってしまったのか!?」という見方が浮上したのは、6月にかけて日経平均株価が暴落し、そしてドル円相場も103円から一時93円まで急激なドル安・円高になった局面でした。
そんなアベノミクス相場の評価をとてもうまく説明できそうなのが
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