予約殺到の「内部被曝測定装置」 精度に問題あり!?
牛肉からセシウムが検出されたりと、内部被曝の不安に駆られる人が増えている。そんななか、内部被曝を検査する装置・ホールボディカウンターに人々が殺到している。しかし、その計測数値の読み方や検出された核種に矛盾があるなどの問題も明らかになっている。ホールボディカウンター。それは内部被曝検査の最終兵器なのか?
◆WBC検査で内部被曝発覚と怯える人々が増加。その理由は?
「Hがんセンターでホールボディカウンター(以下、WBC)を受けてきました。測定結果、内部被曝していました」
8月中旬、都内在住のある男性のツイートが話題になった。この男性は、都内在住でしばらくは京都に避難していたというが、セシウム137と134が検出されたというのだ。
ツイートに添付された画像を見ると、確かにセシウムの箇所は「ND」(検出せず)ではない。この男性以外にも、「長崎の病院でWBCを受けたらストロンチウムが検出された」という男性や、某誌記者がWBCを受けて、セシウムが検出された記事などが話題になっている。
実は今、福島第一原発至近からの避難住民以外でも、内部被曝を危惧してWBC検査を望む人が急増しているのだ。
◆設置病院に問い合わせが殺到
神奈川県の北里大学病院は、緊急性の高い被曝者治療のための二次被曝医療機関として指定されており、WBCや除染室などを設置している。そのため、首都圏の一般市民からの問い合わせも殺到している。病院側がわざわざ「一般の方々からの依頼については対応できません」とHPで告知しているほどだ。
子供の内部被曝を危惧する若い母親は不安を漏らす。「北里大学病院や放射線医学研究所など首都圏でWBCがあるという施設に問い合わせしたけど、どこも受け入れてくれなくて……」
なぜ受け入れできないのか。ある病院関係者はこう釈明する。「WBCを設置する病院は非常に少ないのが現状。そして、まずは福島から避難された方の検査が優先です。なかなか東京や神奈川の一般市民の方々の対応までは手が回らない」
そんな事情を受けて、一部の病院では“簡易WBC”を利用して、一般の人も対象に内部被曝検査を行うと謳うところも登場した。
そのクリニックに電話してみると、「現在、10月まで予約が埋まっており、取材などにも応じられない」という。
これだけ多くの人が不安を抱え、WBCによる検査を受けたがっているのだから、機械を増産すればいいじゃないかとも思えてしまう。しかし、精密なWBCについて言えばそうもいかない理由があるという。放射線安全管理学を専門にする首都大学東京大学院・福士政広教授は次のように語る。
「精密なWBCに限って言えば、そう簡単に量産できない事情がある。まず材料にする鉄が問題です。通常の鉄は、戦中から内壁にコバルト60を埋め込んだ溶鉱炉を使うようになったため、バックグラウンドの放射線数値が高くて使えない。そのため、戦前に造られた戦艦などの鉄を特殊な炉を使って造る必要があるんですただし、簡易型についてはこの限りではありません」
さらに、WBC自体も、これさえ受ければ内部被曝がバッチリわかるわけではないという。冒頭でも述べたとおり計測数値の読み方や検出された核種に矛盾があるなどの問題があるからだ。
⇒「知識不足では不安を招く!正しい内部被曝検査を知る!」に続く
https://nikkan-spa.jp/48578
【福士政広氏】
首都大学東京大学院放射線科学域長。放射線安全管理や防護を専門とし、今秋エステーから発売される簡易型放射線測定器「エアカウンター」の監修も行っている
― 内部被曝測定装置はどこまで信用できるのか?【1】 ―
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