世界的ラリーで占う 来年の投資先はどこがよいか?(1)
■大混乱の世界経済のなか、伝説の金融マン石井至氏が次なる一手を提案する!
日経平均は年初来安値を更新し、ドル円も歴史的円高圏での推移が定着している。EU加盟国の債務問題や、尾を引いているアメリカのサブプライム問題からの一連の経済不安。世界同時株安で、虎の子を株式投資に回している人にとっては、落ち着けない状況だろう。
あまり言われていないが、EUの国債債務問題は、実は、ギリシャ、アイルランド、ポルトガルにとどまるのであれば心配はいらない。欧州委員会からの600億ユーロ、欧州金融安定基金のうちAAA格で保障できるのが約2500億ユーロで合計3100億ユーロが自前で緊急融資にまわせる。さらに、慣習上その半分までをIMFが面倒をみるので、合計で約4700億ユーロまでは緊急融資が機能する。ギリシャ、アイルランド、ポルトガルの3か国だけであれば、2011~2013年までの毎年の予算の赤字と国債の償還の合計が約2800億ユーロだと推計されているから、問題がないのだ。
困るのは、ここにスペインが加わったとき。スペインが破綻すると、2012~2013年の2年間の予算の赤字と国債償還の合計が4300億ユーロとなり、2014年にはEUとIMFからの緊急融資を受けても破綻してしまう。だから、EUの国債債務問題では、「スペイン」がキーワードということだ。
逆に私は、アメリカの問題は深刻だと見ている。「臭いものにフタをした」状態がずっと続いているからだ。数年前に米国の金融当局者が日本の金融当局にきて、「失われた10年」を乗り越えた「ゼロ金利政策」について勉強しにきていた。それが、QE1・QE2として登場した。今は、中期債を売り、長期債を買うツイスト・オペレーションで長期金利が上がらないように気をつけているが、要は、これからまだ5~6年間、米国経済は調子が悪いということだ。
では、どこに投資すべきか。ブラジルか、インドか。実は、私は、来年はロシアだと見ている。
つい先日、来年のロシア大統領選挙に、与党「統一ロシア」は大統領候補としてプーチン首相を立てると宣言した。同時に、メドベージェフ大統領が首相 になることが事実上決まった。しかし、これは欧米メディアの予測とはまったく違っていた。たとえば、ファイナンシャルタイムスは、来年のプーチンの大統領 への復帰はないと明言していた。日本のメディアでは、朝日新聞がその記事を引用していた。しかし、私は、今年7月にモスクワに行ったときに、すでに「来年 の大統領選はプーチンで決まり!」という確信を得ていた。そして投資先は、今こそ、「ロシア投信」あるいは「ガスプロム」だと確信した。次回はその理由を説明しよう。
⇒世界的ラリーで占う 来年の投資先はどこがよいか?(2) に続く
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【筆者プロフィール】
石井至(いしい いたる) 1965年北海道生まれ。東大医学部卒。米・スイス・フランスの外資系銀行でデリバティブ商品開発に従事。28歳でマネージング・ディレクター就任は日本人最年少記録。32歳に引退後、独立。現在は石井兄弟社代表取締役社長。金融コンサルタンティングを軸に、金融・教育分野で事業展開し、運営する小学校受験塾「アンテナ・プレスクール」は名門校への高合格率を誇る。
画像/Jean & Nathalie from Flickr
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