何かに目覚めちゃった人たちは、なぜエスカレートしていくのか?
思想信条から趣味、嗜好など、人は変わる。人との関係性もまた、変わりゆく。とはいえ、親しい人が突如、予想だにしなかった“変革”を遂げたとき、その変化を受け入れられるのか? 嫌いになれたら楽だが、嫌いになるのも難しいのである
◆“人生のシンプル化”という目覚めのメリット
なぜ、人は目覚めるのか? いや、何かにハマること、主義主張を持つことは決して悪いことではない。が、なぜ、エスカレートしてしまうことが多いのか?
精神科医の春日武彦氏は「目覚めには、人生がシンプルになるというメリットがある」と解説する。
「人にとって、どうにもならないある問題を抱えているときと、問題がいくつも取っ散らかった状態のときと、どっちがツラいかというと、キツいのは後者です。物事はなんでも一挙に解決できるものではありませんが、立ち向かう敵をひとつにできれば、本人としては手応えがあるし、楽になれる」
いわば、債務整理のようなもの。そして、それにのめり込んでいくのも自然の流れだそう。
「宙ぶらりんだった自分が、自己肯定できるわけですから、ズブズブとハマっていく。だからパートナー側が、それを否定すれば、衝突するのも至極当然なんですよ。本人はそれにすがるほど大変な状態なわけですから、否定すればさらにすがりつく。目覚めたもの、そのものに対して、いい悪いを言っても詮ないことなんです」
パートナーの立場としては、自分が巻き込まれないように全肯定はせず、一定の距離を保つ。そして、「この人は今、こうせざるを得ない」という寛大な気持ちを持って、泳がせてあげることが大事だという。
しかし、厄介なのはその影響が外にも出ていくケースもあることだ。
「他人を巻き込むのも、自分を正当化したい気持ちが絡んでいるからです。ここでも肯定しつつ、『ウチではいいけれど、世間さまはいろいろだから、うまく立ち回ってね』と伝える。まあ、そもそもが、それなりに世間で生きていければいいわけですから」
そうしているうちに、熱は治まるかもしれないし、互いにとっての折り合いが見つけられるかもしれない。それでも暴走が止まらない場合は最終手段もやむなし……。
「本来は目覚めたことで心に余裕が出てくれば、自然とパートナーに対する余裕も芽生えてくるはず。それでも家庭がうまく回らないならば、もしかしたらお互いのズレが顕在化しただけの可能性もある。だとしたら、早いうちに別れるのが得策かもしれませんね(苦笑)」
【春日武彦先生】
’51年、京都府生まれ。精神科医。都立松沢病院部長、都立墨東病院精神科部長を経て、現在も臨床に携わる。著書に『「キモさ」の解剖室』、『様子を見ましょう、死が訪れるまで』など
取材・文/目覚めのとき取材班 イラスト/佐藤ワカナ
― 「ツレが○○に目覚めたとき」の傾向と対策【6】 ―
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