夫がフード左翼に目覚めた妻の悲鳴「食費が倍に…」
思想信条から趣味、嗜好など、人は変わる。人との関係性もまた、変わりゆく。とはいえ、親しい人が突如、予想だにしなかった“変革”を遂げたとき、その変化を受け入れられるのか? 嫌いになれたら楽だが、嫌いになるのも難しいのである
◆夫がフード左翼に目覚めて<田中敦子さん(仮名・39歳)>
ライターの速水健朗氏は現代の食品産業のあり方に反発する人を「フード左翼」と定義したが、田中敦子さんの夫はまさに、右派からフード左翼へと大転向をしたひとり。
「自分の父親が脳梗塞で倒れたことが、きっかけだったようです。以前はジャンクフードが大好きで、夕食の前にスナック菓子を食べるような人だったので、最初は私も健康を意識してくれるようになったと喜んでいたんですが……」
最初は「豆乳を飲む」「お酢を積極的に摂取する」程度だったのだが、田中さんへの要求はしだいにエスカレート。料理に使う油は、オリーブオイルかゴマ油に限定。味噌などの調味料から野菜まで、有機食品かどうか、どこ産かを気にするようになったという。
「とにかく、一つひとつ『これは何県産?』と質問されるのが面倒で。次第に『この豚は何を食べて育ったのか?』と聞くようになり、最近では、『この魚は何を食べて……』とまで言いだして。さすがに『海の中のことまで知らないわよ!』って怒鳴りたくなりました。答えるのも面倒なので、夕食の品数を減らしたら、今度は『バランスが悪い』って怒るし……」
最初は質問にも律儀に答え、野菜は無農薬、肉や魚も安全な飼料で育ったものを……と夫の要求どおりに食材も揃えていたが、食費は以前の倍以上に。そこで「家計的にも厳しい」と相談すると、「じゃあ他を削れ!」とムチャな要求をされたそうだ。
「最近はもう諦めて、産地を聞かれたら適当に答えていますし、食材も家計の無理のない範囲のものに少しずつ戻しています。主人も冷蔵庫の中や料理の様子までは確認してこないので、まったくバレていません。もともとが味音痴で、高い肉と安い肉を一緒に出しても、安いほうを『おいしい!』と言って食べるような人ですから(笑)」
何も気づかない旦那さんは、「良いものを食べているから最近は体の調子がいい」と上機嫌で、実際に健康にもなっているとか。
「あの質問攻撃にまともに対応していたら、私がおかしくなってただろうし、これからも、ごまかしながらやっていきます」
<事情通・宇山恵子氏が解説>
◆ときに「ガス抜き」を。不満を言い合うとむしろ健康には×
「健康に気をつける」というのは、“正しい”ことです。その“正しさ”が、罠となるのですが、さらに厄介なのは、仲間を見つけたときです。仲間間の競争原理が働き、歯止めが利かなくなり、かつ、そこでの価値観が絶対になるので、聞く耳も持たなくなってしまう。こうなると頭ごなしに言うのは逆効果。相手を否定せず、たまに違う価値観に触れさせるのが、対処法になるように思います。私自身、アンチエイジングにハマるお医者さま方に「ガス抜きしましょう」と誘い、深夜まで飲んで、締めにラーメン二郎に連れていったり(笑)。そうすると、表情が和らいで、「明日から頑張るよ」となる。
欲望のまま食べたいものを食べてる人よりも、ちょっと行きすぎた健康オタクのほうが健康なのは確かです。農薬については国の基準もありますから、ヒステリックにならぬよう。「皮肉屋で不信感の強い人は認知症になりやすい」という研究結果もあり、いちいち気にするほうがリスクにもなる。
奥さまも適当なところで「ガス抜き」をさせたり、ごまかしながらやっていけばいい。パートナーに対して不平、不満を言い続けると相手を早死にさせる、という研究データもありますから。
【宇山恵子氏】
医療・美容ジャーナリスト。東京医科歯科大学非常勤講師。海外の医学論文や医療記事を翻訳、国際学会の取材を続ける。近著に『医者も教えてくれなかった実はすごいフルーツの力』
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