「同情するなら仕事くれ!」本当の復興はこれからだ【後編】
― 被災地「地元紙」が見た復興を阻む意外な大問題【7】 ―
←(前編)
◆求人はあれども、難しいマッチング
そこで最近クローズアップされつつあるのが、雇用の問題だ。
「漁港後背地で操業する200超の水産加工企業や、日本製紙の工場に代表されるように、石巻市は広い意味での製造業の街。そこで働く何万人もの市民には、震災後に一時解雇された人が多く、彼らの就労先が見つからないことが問題となり始めています」
その問題に対応する形で、被災者に対する就職支援の動きは活発化。駅前にはハローワークの臨時窓口が設けられ、実際に求人も増加したが、「求人のミスマッチ」という問題も起こっている。例えば、実際問題として大工不足は深刻で、住宅を直したくてもなかなか来てもらえないという人も多いという。が、復興に不可欠な建設や土木関係の求人は多くとも、こうした職種は復興が終われば仕事が少なくなるという懸念もあるのか、うまく人が集まらない。
「やはり長く働いてきた職種、可能であれば以前の職場で、仕事を続けたいというのが被災者の心情です。自分の家もない、自分の仕事もない、大事な人も失ってしまったとなれば、この街にいる理由を見いだせなくなる人もいます。実際に若い世代を中心に人口の流出も始まっているため、主要産業の復興は何よりも必要なんです」
そのためには民間企業も含めた支援が必要だと武内氏は語る。
「被災者に対する生活支援が最優先なのは当然。優先順位はあって当然ですが、『被災企業』への支援も同時に行わなくては、本当の意味での生活支援になりません。公的支援はもちろん、民間企業の投資や助成も必要になると思います。『築地銀だこ』を運営するホットランドが石巻への本社移転を決めたり、水産加工会社で組合をつくろうという案が出たり。一部の企業でその動きも始まってはいますね」
そしてその支援は「自立を助けるものであるべき」と武内氏。
「『同情するならカネをくれ』というセリフがありますが、その言葉を借りるなら被災地の人たちの心情は、『同情するなら仕事くれ』だと思います。誰も望んで被災したわけではありません。が、物資や金銭を『もらう』だけの文化が根づくと、人も街もダメになっていく。被災者たちが自分で体を動かして、その代償としてお金をもらうという『仕事』ができるようになってこそ、被災者も自分の未来が具体的に見えてきます。本当の復興支援は自立支援であるべきですから」
【武内宏之 報道部長】
石巻市出身。1980年から同社勤務。
被災後の6日間は手書きの壁新聞で報道を続けた
⇒【画像】被災エリアは広大な更地に…写真で見る石巻市
https://nikkan-spa.jp/62624
この特集の前回記事
ハッシュタグ