「実家の仏壇は亡き親の意外な一面を発見できる」ペリー荻野氏
―[脱力系[親の遺言]泣き笑い報告]―
◆思わぬ品々が眠る仏壇の引き出し……帰省したらそっと開けてみよう
まだまだ元気な父、母が放つ、本気とも冗談ともつかない遺言めいたセリフ、病床で口にする思いがけないカミングアウト……まともに聞いていたら脱力しそうな話にも、後になれば、その時々の親なりの思いを窺い知るものである。
そんな親や先祖の知られざる人生が詰まっている場所が「仏壇」である、と言うのは時代劇評論家・ペリー荻野さん。名古屋きっての門前町で、仏壇職人の娘として育ったゆえんで、葬儀のしきたりや仏壇にも造詣が深い。
「粗大ゴミに出しづらく、破壊することも憚られる古い仏壇は、仏壇屋が引き取るケースが多いんです。それで、私物が残っていないか改めて確認すると、いろいろ出てくるのが仏壇の引き出し。一般的には線香、ろうそくを入れるものですが、古くは戦時中のものや、聖徳太子が描かれていた昭和初期のお札や記念コイン、江戸時代の古銭を発見できることがあります」
思わぬお宝とともに隠れているのが、親たちの意外な一面を発見できる品々である。
「父親の手帳、そこに挟まれた遺言や借用書など、そして古い写真も眠っていたりします。ご両親や先代の若い頃、ひょっとすると恋愛時代の写真や、おばあちゃんの特攻隊に行って亡くなった元カレ、なんていうのが見つかることも。また、初めてもらった手紙や指輪なども、人はなぜか仏壇ができた途端にそこへ移動させがちです」
親の恋文など出てきたら……笑えるというより引くかも。
「まさかウチにはないだろう、という人も実家に帰ったら、仏壇の引き出しを一度、夜中にこっそり開けてみたらどうでしょう。実は自分が子供の時に隠した変な宝物が出てきて、俺じゃんこれ?みたいな、意外なところから発掘される話に、皆でしみじみすることもあるやもしれません」
それにしても、死んだあとに、隠していた手紙や写真が発掘されると思ったら、それこそ死にたい気持ちになりそうだが……。
「死んだあとのことなんて気にしなくていい、死んでいるんだから……と、かの寂聴先生も言っています。写真ならマシ。知らない人がゾロゾロ出てくるほうがコワい。ちなみに、ウチの父は、『実は知らない親戚が現れても驚くなよ』と言い残して旅立ちましたが、ホントに“従兄弟みたいな人たち”が10人くらい現れましたから(苦笑)」
【ペリー荻野氏】
コラムニスト、時代劇研究家。著書『ちょんまげ八百八町』『このマゲがすごい』ほか。ラジオ『ドコモ団塊倶楽部』(文化放送)に出演中
取材・文/清水芽々 藤村はるな 古澤誠一郎 水越恵理子 山脇麻生 イラスト/坂本千明
― 脱力系[親の遺言]泣き笑い報告【8】 ―
『ちょんまげ八百八町』 テレビ時代劇おもしろエッセイ |
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