歌舞伎町“ぼったくり客引き”との攻防戦「私にも妻子がいるんですよ!」
昨年末、新宿の居酒屋「F」がぼったくり行為を行ったとして炎上、閉店にまで発展した騒動が記憶に新しい。このようなぼったくり店とタッグを組んでいるのが“ぼったくり客引き”である。事情通によると、東京・歌舞伎町では現在、ぼったくり店と契約した100から200人の客引きが立っている。彼らの取り分は時給、人数バック、ぼったくり総額3~6割バックと細かな報酬規程があり、稼ぐ客引きは月数万円~数百万の稼ぎともいわれる。
「例えば飲食店の場合、21時まで6割、0時までは5割、それ以降4割、3人以上の団体や同じ店に複数人送るとボーナスなど細かく決まっている」(歌舞伎町の客引き男性)
客引き業は、歓楽街で仕事にあぶれた人間の最後の受け皿の役割も担っているが、年々取締は厳しくなっており、儲けの薄い店を何店も掛け持ちしてようやく成り立っているという。記者も先日、その逼迫ぶりを目の当たりにした。
正月明けの歌舞伎町歓楽街。記者と友人が歩いていると、「飲み、おっぱい……。なんでもいけますよ!」客引きの安田(自称)が声をかけてきた。写真を見せながら「ラッキーですね。今ならこの娘1万。飲みから最後までOK」と安田。
「ウチはモデル事務所直営グループなので安心です。不安だったら電話してくださいよ(とケータイ番号を教えてくれる)」
少し安心して友人と相談し、行って様子を見てみようということになった。
安田に紹介料1人2千円を払うと安田は別の男を呼び、その男が古いビルの一室へ自分と友人を案内。そこでサービス料1万、入室料1万5千、指名料3千円を払う。しかし、見渡すとヤバい空気が漂っている。“VIP”と書かれたふざけた個室は、飲みどころかプレイできる雰囲気ではない。
何より外から聞こえる女性の声が全部中国語! ここで騙されたと確信した記者は「脱出する。外で会おう」と友人にLINEを送った。
そして、出てきたのは安田が見せた写真とは別人の出っ歯の60代女性。
全然違うからチェンジと言うと「じゃあ交通費4千円よこせ」という。ブチ切れた記者ーは、すぐに安田へ連絡するも“着信拒否”。ラチがあかずにいると彼女は財布を覗き「3万円ならしてもいい」とカネを抜き取ろうとして押し問答となる。
だったら一番安いのはいくらだと聞くと、オナホールを取り出し「5千円!」と笑う。さらに巻き上げられるのが怖いため脱出料と割り切り5千円札を投げつけ、逃げ出した。
友人と合流し街を探すこと小一時間後、一番街で安田を発見した記者。
「話が違うぞ!」つかみかかると……
「僕、家庭があって子供が小さいんです。人の親だから嘘はつきませんよ! (ポケットから小銭を出し缶コーヒーを自販機で購入)どうぞ飲んでください。僕のおごりです。もう一度チャンスくれませんか? ワンチャン! お願いします! 今度は上戸彩が出てきますから」
性懲りもなく食い下がる安田のあまりの必死さに、怒る気力もなくしたのだった。
元ぼったくりチェーン店経営者で、小説家の影野臣直氏は次のように話す。
「今はひと昔前と比べて、客引きが飽和状態。相当頑張らないと稼げなくなっているんです。また、客引き自体の質も下がってきていて、上客を見極めることができずに変なクレーマーばかり連れて来ちゃうとかね。中には、他店の店長や見回りの刑事を客引きしちゃうバカもいますからね」
皆、生き残りに必死なのだ。 <取材・文/木下秀彦>
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