「買ってはいけない」ユニクロのTシャツ3選
―[メンズファッションバイヤーMB]―
メンズファッションバイヤー&ブロガーのMBです。洋服の買いつけという本業の傍ら、ブログやメルマガで「オシャレのルール」について発信していたところ、こちらで執筆させていただくことになりました。連載第35回目をよろしくお願いします。
夏になるとユニクロが打ち出してくるTシャツシリーズ、通称「UT」。素材など品質は言わずもがなで高いクオリティですが、年を追うごとにラインナップが増え、アニメやスターウォーズなどのコラボものも近年活発になっています。オンラインでも店頭でも種類が豊富なだけに、「どれを買えばいいのかわからない」と思っている方は多いはず。そこで今回は、「これはちょっと……『買ってはいけないユニクロのTシャツ』」と、「これはマストバイ!『買うべきユニクロのTシャツ』」といった具合に、NGとマストバイをそれぞれ3点選んで解説します。今年のTシャツ選びの指針としてください。
▼「買ってはいけないユニクロTシャツ3選」
●松竹歌舞伎グラフィックT(半袖)790円(+税)
「ネタ要員」的なグラフィックTシャツはユニクロではお馴染み。このTシャツを声高に「買ってはいけない」と言うこと自体ヤボでナンセンスに思えるくらいおしゃれ感はゼロ。おそらく外国人需要を見越したものなので、「松竹歌舞伎ファン」でない限り購入しなくてもいいでしょう。実際、インバウンド需要が真っ盛りの銀座ユニクロで大きく展開していました。
●アベンジャーズグラフィックT(半袖)1500円(+税)
ドラえもんやディズニーなどキャラクターとのコラボも多く、子供なら大喜びですが、「大人に向けてもつくっちゃおう」という考えが透けて見える「アベンジャーズ」シリーズ。「アメコミだからなんとなく……おしゃれ感があるような?」と思って手を伸ばしがちですが、しょせんキャラクターもの。よほどデザインを洗練させない限りは着こなすことはなかなか難しいと思います。
キャラクターものはカラフルな色合いや線の多い派手なデザインが特徴です。Tシャツのグラフィックは色数が多いほど、デザインが派手なほどカジュアルで子供っぽく見えます。「アメコミ」という字面はなんとなく「おしゃれ感」を漂わせますが、赤や黄など原色をふんだんに使ったグラフィックはどうしても子供っぽい。日本でもアメリカでもキャラクターものはやはり「キワもの」が多いといっていいでしょう。とくに男性はアイテム「単体」のデザインに惹かれて購入する方が多いのですが、服は「全体」です。一点でも子供っぽい要素の服が入ってしまうと、「全体」は損なわれるので注意が必要です。
●攻殻機動隊グラフィックT 790円(+税)
ディープな大人のファンを多く持つアニメ「攻殻機動隊シリーズ」。実は私も大ファンなのですが、贔屓目を捨てて見るとなかなか厳しいものがあります。アニメ感の少ない洗練されたグラフィックは評価できるものの、胸元に大きく配置されたキャラクター「草薙素子」の顔は問題です。モノトーンで色数少なく表現していますが、「人間の顔」はどんなデザイン、グラフィックよりも、私たちの脳に強く印象づけられるモチーフです。視線は強制的に人間の顔に集まるようになっています。たとえモノトーンで色数を抑えても、洗練されたグラフィックにしても、人の顔がこれだけ大きくプリントされてしまうと、どうしても目がいき、「アニメのTシャツを着ている」とイメージされてしまいます。「子供っぽい」印象からおしゃれ感を出すのは非常に難しいのです。
しかしデザインはともかく、Tシャツそのもののつくりは素晴らしい。風合い柔らかな素材はもちろん、顔プリント部分は布を切り替えて立体的に表現していたり、首後ろにもプリントを入れたり、オリジナルのタグを裾につけていたり、とにかく手が込んでいます。これを790円で出せるユニクロには脱帽です。一般的なブランドであればどんなに安くしても3000円はするでしょう。
▼「マストバイ!買うべきユニクロTシャツ3選」
●マーチャント&ミルズグラフィックT(半袖)790円(+税)
スーツ屋のスタッフなどがよくやる「メジャーの肩がけ」。これをTシャツのグラフィックとして表現したものです。実際のメジャーと同様に細かく目盛りまで緻密にプリントした「転写」のような表現。まるで本当にメジャーを肩にかけているようなデザインです。こういったトロンプルイユ(だまし絵)調のTシャツやカットソーのデザインは世界のトップデザイナー、ジャンポールゴルチエやマルタンマルジェラが得意とする技法です。日本のデザイナーズブランドでもこういっただまし絵調のTシャツデザインは多くありますが、どうしても目を引こうと「派手」にしすぎて子供っぽくなりがち。このTシャツはメジャーをかけたスーツ屋のようにナチュラルな表現で、とても自然にプリントが馴染んでいます。色数も黒一色で大人っぽく落ち着いた印象。スラックスに合わせた大人なスタイルをすればショップスタッフのような雰囲気になります。
●SPRZ NYグラフィックT(ジャクソン・ポロック・半袖)1500円(+税)
⇒【写真】はコチラ nikkan-spa.jp/?attachment_id=900640
ニューヨーク近代美術館とのプロジェクト「SPRZ NYグラフィックT」シリーズ。このラインナップでは世界的なグラフィックデザイナーの作品をTシャツに落とし込んでいます。こちらは「アクション・ペインティング」の元祖であるジャクソン・ポロックの作品をTシャツに表現したもの。ジャクソン・ポロックを洋服に落とし込んだのは何もユニクロが先駆けではなく、90年代にはパリコレ起点の世界的なブランド「ヘルムートラング」などがデニムへのアクション・ペインティングなどでジャクソン・ポロックのオマージュを表現し、世界的なトレンドともなりました。
その後ジャクソン・ポロック調の服は多くのブランドから発売されますが、色数が増えて派手になってしまっていたり、ペイントの上にさらに文字プリントなどを重ねたりと何かとカジュアルで子供っぽい雰囲気になりがちですが、このユニクロのモデルはシンプルに黒一色で表現。とくに凝った装飾もせず、あくまでもシンプルにジャクソン・ポロックを表現していて、大人な雰囲気が伺えます。
オンラインストアでは完売となっていますが、店舗ではまだまだ在庫がある模様。気になる人は問い合わせてみるといいでしょう。
●SPRZ NYグラフィックT(ロバート・メイプルソープ・半袖)1500円(+税)
同じく「SPRZ NYグラフィックT」シリーズ。こちらは写真家ロバート・メイプルソープの作品をTシャツに落とし込んだもの。モノトーンで表現したシンプルなデザインがとても好印象。夏だからと無為にカラフルになりがちなグラフィックTシャツの世界ですが、夏だからこそモノトーンに寄せるべきでしょう。「カラフル」は子供っぽさを表現し、色数の少ないものは大人っぽさを表現します。スーツを連想すればわかると思います。スーツはかしこまったものであればあるほどモノトーンです。皆が子供っぽくなる夏シーズンは「おしゃれ感」を出すには大人っぽさを表現したモノトーンが効果的です。
さて、いかがだったでしょうか? 私が配信するメールマガジン「現役メンズバイヤーが伝える洋服の着こなし&コーディネート診断」では、ユニクロなどで買うべきアイテムを解説する「ファストファッションマストバイ」などのコーナーを連載中です。興味ある方はそちらもぜひどうぞ。 <文/MB>ファッションバイヤー。最新刊『MBの偏愛ブランド図鑑』のほか、『最速でおしゃれに見せる方法 <実践編>』『最速でおしゃれに見せる方法』『幸服論――人生は服で簡単に変えられる』など関連書籍が累計200万部を突破。ブログ「Knower Mag現役メンズバイヤーが伝えるオシャレになる方法」、ユーチューブ「MBチャンネル」も話題に。年間の被服費は1000万円超! (Twitterアカウント:@MBKnowerMag)『MBの偏愛ブランド図鑑』 今着るべきブランド60の歴史や特色を、自身が愛用する品とともに徹底紹介 |
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