大物ヤクザが書いた名著ベスト5 その衝撃的中身とは?
―[ヤクザは日本の文化だ!]―
創設100年を迎えた山口組の大分裂騒動に注目が集まっている。が、ここではあえて、映画や小説、マンガなど大衆娯楽として広く長く愛されてきた文化としての「ヤクザ」を紹介する!
◆芸大出身のインテリも!ヤクザが自ら書いたヤクザの空気を嗅げる本
ヤクザ関連の書籍の中でもリアリティが強いのが、ヤクザ自身が自ら著した書籍群だ。ヤクザ関連の著作を数多く持つライターの山平重樹氏にオススメの本を聞いた。
「まずは『山口組三代目 田岡一雄自伝』(徳間書店)。飯干晃一が書いた評伝に『事実と違うことが多い』と不満を持った田岡三代目が、自ら『アサヒ芸能』で連載した文章をまとめたものです。現役バリバリの組長が自伝を発表し、それがすぐ映画化もされたというのは当時でも衝撃的でした。世界でヤクザの代名詞となっている山口組を知るには外せない一冊です」
また元・後藤組組長で、山口組の幹部構成員も務めた後藤忠政氏の自伝『憚りながら』(宝島社文庫)も推薦。伝説の組長が山一抗争、伊丹十三襲撃事件、右翼活動家・野村秋介との出会い、政財界との交友などを振り返る本書は、20万部超のベストセラーに。
「世間では経済ヤクザのようにいわれていますが、とても人間的魅力のある人物だとわかる一冊です。実際に会って話をしても、ヤクザの話より政治の話が好きで、時事・時局に精通した弁舌さわやかな人ですよ。また最近引退した、稲川会系髙田一家初代総長・髙田燿山氏の『ヤクザとシノギ』(双葉社)も面白い。彼は自ら小説も書くような人だけあり文章も達者。刑務所では、刑務官の受刑者いじめに怒って反権力闘争もしています。東日本大震災の際にも救援活動をしていて、弱きを助け強きをくじく任侠精神を体現した人物です」
またヤクザの世界には驚くほどインテリで多芸多才な人もいる。
「『間道―見世物とテキヤの領域』(新宿書房)の著者の坂入尚文氏は、東京芸大の彫刻科を中退してテキヤになった人物。見せ物小屋の仕事や、飴細工師としてテキヤの世界に入り、異邦人のようにその世界の慣習を眺める視点は面白いです。最近はテキヤも一緒くたに暴力団とされていますが、祭りの面白さ、一面のいかがわしさ、非日常を担ってきた“伝統芸能”としてのテキヤ稼業がわかる一冊でもありますね。また『極道一番搾り』(宝島社文庫)の著者の溝下秀男氏は九州一の大親分だった人物ですが、スポーツ万能で大の動物愛好家。ジェットスキーから篆刻、水墨画までプロはだしでこなしてしまう、ヤクザ界のスーパースターです」
人間的魅力に溢れた人ばかりで驚いてしまうが、「右を向けというと左を向くようなヤクザたちを束ねる人間は、人間的魅力が不可欠だし、別の世界でもトップを取れる才覚を持つ人ばかりなんです」
【山平重樹氏】
フリーライター。『ヤクザの散り際』『旭龍 沖縄ヤクザ統一への軌跡――富永清・伝』などヤクザ関連の著作多数。近著に『決死勤皇 生涯志士』『高倉健と任侠映画』
― ヤクザは日本の文化だ! ―
『山口組三代目 田岡一雄自伝』 日本最大のヤクザ組織・山口組。その礎を築いた田岡三代目が自ら綴った、迫真の昭和史秘録。美空ひばり、力道山から日米安保まで――戦後日本の「真相」がこの一冊に凝縮! |
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