「日本式教育」は本当に輸出する価値があるのか?
本来、美徳だったはずの謙虚さはどこへやら。メディアでは連日「日本人がいかにスゴいか」といったことばかりが取り上げられるが、果たしてそれは本当なのだろうか? 過熱する日本流の裏側を探る
◆日本式教育
今夏、文部科学省は「日本式教育」を海外輸出する計画を発表した。運動会に部活動、給食の配膳や清掃活動といった日本独自の教育スタイルが道徳心や規律を育むのに有効だとして、新興国が導入を検討しているためだという。
「日本型教育は、そういった活動に子供を全員参加させ、学校に縛りつけるなかで、ある程度コントロールしつつ偏差値の高い子供、スポーツの優秀な子供を育てることができる。学校を『エリート選抜の場』として機能させることができるシステムといってよい。海外で日本型教育の導入を望む国では、その辺がかなり重要視されていると思います」と言うのは、名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授の内田良氏。
「しかし、こうした教育は子供たちにかなりの代償を背負わせているわけで、“輸出”という点については疑問を抱いてしまいます」
その代償の最たるものが、先日、大阪府の中学校で「組み体操」の人間ピラミッドが崩れ、複数の生徒がケガを負った事故。
「日本式教育のなかでも運動会、特に『組み体操』の危険性はかなりの問題です。組み体操は集団行動によって大きな感動が味わえますが、そのリスクは甚大な割に、誰も責任を取ろうとしない。リスクだけが子供にのしかかるのです」
生徒の代償が大きいという点では、部活動も同様だ。
「半ば強制参加で拘束時間が長いうえに、死亡事故に繋がるケースもある。これも教育者にメリットを聞くと“一致団結”など精神論的な答えが返ってきます」
ただ、メリットもある。
「途上国では学校に行けなかったり、経済的な事情でスポーツができない子供もいます。そうした子に低コストで運動できる機会を保証するという点は部活動のメリットです。また、教師が顧問をやり、児童が給食当番や掃除係をやることで教育の低コスト化にもなっている。それがよいことかはさておき、そうした面で日本型教育を望む国もあるかもしれません」
メリットはあれども、「参加の強制」に繋がっていることまでは輸出してほしくないものだ。
★教育としての側面よりも、「感動」や「一体感」を重視
【内田良氏】
名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授。学校で起きた各種事故や問題のデータを収集、研究している。近著に『教育という病』(光文社新書)がある
※写真はイメージです(photo by freedomcat & Kanko* via flickr)
― [日本流はスゴい!]は本当なのか? ―
『教育という病』 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」 |
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