「自民党なんか支持しない!」猪瀬直樹・前都知事が石破氏に急接近のナゾ?
安保法案の廃案を目指し共産党は「国民連合政権構想」を打ち出し、野党の大同団結を呼びかけているが、野党第一党の民主党が「共産とだけは組めない」と後ろ向きなら、お家騒動に揺れる維新の党は「民主党という名前の政党とは合流できない」と、枝葉末節にこだわる始末。しかも、民主党には解党論が燻り続け、維新の党は年内に解散の見込みだ。来夏の参院選に向けた野党再編は、遅々として進んでいない……。
「自民党なんか支持してないよ! 民主党もね」――。
正義について考えよう』(扶桑社新書)のなかで、猪瀬直樹・前東京都知事はこうブチ上げている。
首都・東京のトップを務めた人間の発言としては意外な気もするが、当人にすれば、ごく当然の発言らしい。
道路公団改革では既得権益層とガチの大ゲンカを繰り広げ、都知事就任後も羽田空港国際化や地下鉄一元化、震災後は“原子力ムラ”を向こうに回した東電改革など、「改革」という名のバトルを展開。そんな姿勢が旧態依然とした勢力の虎の尾を踏んだのか、医療法人・徳洲会からの資金提供問題で都知事の座を追われることになった。
「総理、この本をぜひ読んでください」――。
一方、石破茂・地方創生担当相は、国会でこう首相に迫っていた。
片手に掲げたのは『昭和16年夏の敗戦』(中公文庫)。’83年の猪瀬氏の著作だ。
同書は、太平洋戦争の開戦決定の直前、日本の必敗を正確にシミュレーションしていたにもかかわらず、戦争に踏み出した「戦略なき国家運営」がもたらした災厄を炙り出している。
実は、石破氏は国会でこの質問を2人の首相に投げかけていた。1人は’10年に政権を担当していた民主党の菅直人首相。そして、もう1人は’07年に第一次政権を率いていた安倍晋三首相だった。
自民党が野党に下野していた’10年、菅首相に批判的な質問をするのはわかるが、同じ政権与党の一員でありながら安倍首相に“読書”を迫った意図は何だったのか……。
猪瀬氏が都知事時代、次々と改革的政策を手掛けたように、石破氏も、政界きっての政策通である安全保障分野はもちろんのこと、農相時代には農協改革に手を着け、タブー中のタブーだった減反の見直しにまで言及し、自民党・農林族とバトルを繰り広げるほど、その政治姿勢は改革的なものだった。
そんな石破氏が、このところ猪瀬氏に急接近している。おりしも、9月には自身の派閥・水月会を立ち上げ、「ポスト安倍」を目指すことを明言した。一向に進まない野党再編を尻目に、政権与党内で地殻変動が起きつつあるのは確かだ。
そんなカギを握る2人が、このほどシンポジウムで「日本が勝ち残る戦略」について意見を交換するという。開催日は12月8日。74年前、帝国海軍の機動部隊が、真珠湾に奇襲攻撃をかけた日米開戦記念日を敢えて選んだともとれるが……猪瀬氏、石破氏の両氏は、誰に対して「宣戦布告」するのか、同シンポに要注目だ。
【財団法人・日本文明研究所シンポジウム】
「日本文明と地方創生―『強み』=『弱み』で読み解く日本の勝ち残り戦略」
12月8日18時30分開場 19時開始
於・日本経済大学大学院246ホール
http://synapse.am/contents/s/event-1208_nihonbunmei
取材・文/齊藤武宏
先頃、上梓した気鋭の思想家・東浩紀氏との対談本『
『民警』 この国を守るのは「官」ではない。 |
『正義について考えよう』 同調圧力に屈しやすく、リーダー不在でも自ら意思決定を下すこともできない。不決断と総無責任体制の日本には、正義は存在しないのか。安保法制、改憲論議、福島と沖縄の宿痾、東京五輪問題、ジャーナリズム論、文学部不要論……日本が直面する諸問題を「正義」を軸に激論を交わす |
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