『日本という物語』をどう伝えるか【第6回】――実証研究に基づいた正しい時代像

 

育鵬社版歴史教科書のカバー

 一方、前述したとおり、昭和20年8月15日の敗戦でわが国はGHQ(連合国軍総司令部)により約7年間、軍事占領を受けました。その占領目的は、連合国に再び脅威をもたらすことのないように日本の弱体化を図るものであり、言論活動や歴史教育についても過酷な統制を受けました。

 それに呼応するように国内の左派陣営は、戦前の一時期、一世を風靡した皇国史観(天皇を主軸に据えた歴史の見方)への反発もあり、マルクス主義史観(階級闘争史観)によってわが国の歴史を否定的に捉えはじめたのです。

 彼らにとって、「悪い」領主が生産者である農民を身分的に支配し搾取するという封建制度は打倒すべき対象であり、当然のように貧困史観・暗黒史観で江戸を捉えました。学問は、歴史学を含め先人の知の積み重ねを継承しながら発展していくものであり、その後、前提となった考え方を変更するのは容易ではありません。

諸悪の根源は、イデオロギーという「思い込みのフィルター」


 こうして江戸暗黒史観が歴史学界に定着し、教科書を通して教育界に蔓延しました。こうした戦前の薩長史観、皇国史観、戦後のマルクス主義史観(階級闘争史観)は、イデオロギーという色眼鏡(「思い込みのフィルター」と言ってもいい)をかけて歴史を見るため、歴史の事実を見極めることができません。

 縄文時代においても、世界の諸文明に劣っているという色眼鏡をかけて見ていたので、縄文貧困説が蔓延してしまったと言えるでしょう。

 しかし近年の歴史学では、多くの研究者が実証的な考察を行っており、さまざまな歴史事象の解明が進められています。古文書や資料を丹念に読み込むことにより、正確な時代像を描き出そうとしているのです。原始・古代についても、年代測定技術の向上等により考古学が発達し、旧説を覆す新発見が次々と行われています。

実証主義で歴史を見つめよう


 当社の歴史教科書の編集会議議長をつとめた伊藤隆氏(東京大学名誉教授)は、わが国の近現代史を実証主義によって解明した第一人者であり、その研究手法については氏の『歴史と私――史料と歩んだ歴史家の回想』(中公新書)に書かれています。

 また、同じく執筆・監修に当たった岡崎久彦氏(元駐タイ大使)も常々、薩長史観、皇国史観、マルクス主義史観で歴史を見てはならないと論じ、その詳細は氏の『国際情勢判断・半世紀』(育鵬社)で語られています。

 さらに、『日本の歴史 本当は何がすごいのか』(育鵬社)の著書がある美術史研究の大家・田中英道氏(東北大学名誉教授)や、前述の小林達雄氏など碩学の英知が結集され、当社の教科書は編集されました。

 本稿で紹介しきれなかった読みどころ・勘どころについては、育鵬社のホームページの「育鵬社の教科書」という欄から中に入っていただくと、教科書の「内容解説資料」というコーナーがあり、そこでお読みいただけます。

 また、同じく『虹』という情報誌があり、教科書特集号(平成27年4月号)を同じくHPで辿ってもらいますと、現在の歴史教育の課題などもご覧いただけます。

 なお、育鵬社版歴史教科書の正式タイトルは『新編 新しい日本の歴史』です。実際の教科書は全国の教科書取扱書店で取り扱っており、ご注文・お求めの場合は、インターネットで最寄りの教科書取扱書店を検索ください。(連載了)

(文責・育鵬社編集部M)

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