コンビニはタバコの在庫を200万円以上も抱えている?――過度な顧客志向が招く「異常の正常」

コンビニでカートン買いの顧客の頻度は?


 映画『ALWAYS 三丁目の夕日』は、戦後昭和の風景を描いています。このイメージと重ね、昔のタバコ屋さんを思い出すと、小さなガラス窓のある店、眼鏡をかけて孫の手を持ってデンと座ったおばあさん、とっつきにくくブスっとしたタイプや世話好きで話し好きタイプ、マイナー銘柄を買うとたまにシケっている、頭上の棚にはホコリをかぶってズラッと並んだタバコのカートン……といった情景が浮かんできます。

たばこ そんな時代からずいぶんと時が経ち、嫌煙権が主流となった今日では、昔ながらのタバコ屋さんはほとんど姿を消してしまいました。今では多くの愛煙家は、タバコをもっぱらコンビニで買うのではないでしょうか。

 今度コンビニに行く時があれば、気を付けて見てみてください。レジの近くにある立派なタバコ陳列ケースには、かつてのタバコ屋さんのように数多くのタバコが並んでいることでしょう。

 コンビニでは、店舗立地や銘柄によって異なりますが、首都圏だとおおよそ1銘柄1日当たり1個程度売れています(全部で150~200銘柄)。

 しかし、「タバコの在庫が金額にして200万円を超える店舗が多く存在している」と聞くとどうでしょう。直感的に、在庫が多すぎると思のではないでしょうか。

「カートン買いのお客様がいつ来店されてもいいように……」


 そこで、なぜこのような状況となるのか解説しましょう。具体例としてコンビニA店で比較的よく売れる銘柄Mを取り上げます。図1をご覧ください。普段は1日に0~2個売れていますが、3カ月に一度来店される大量買い(カートン買い)の顧客の存在が現状の高在庫水準の原因となっています。

図1 タバコ銘柄Mの販売数量

 お店の方は、「カートン買いのお客様がいつ来店されるか分からない、今までは1カートン(10個入り)だったが、2カートン買われるかもしれない」などと考え、タバコの仕入れを行っているので、図2のように平均在庫が22個となってしまうのです。

図2 タバコ銘柄Mの現状在庫とT・AIで計算した在庫

 多くの会社は顧客志向を経営理念の一つとして現場指導を行っているものです。「お客様の声、要望をよく聞き、お客様満足を高めるよう対応しなさい」といった指導です。

 しかし、3カ月に一度カートン買いする顧客は一人で、その人のために常時その分の在庫を抱えておくのは、果たして合理的でしょうか。店員がこの顧客とコミュニケーションを取り、来店時に間に合うように取り置きサービスをする方がよほど顧客志向に合致していると思われます。

データを正しく読み取り在庫が70%削減!


 そこで、当法人が開発したT・AI(T=Time/時間の人工知能)という「時間とともに変化する量を扱う最先端のコンピュータシステム」を使って在庫計算をしてみると、平均在庫が現状の22個から7個へと大きく削減されることが分かりました。この場合の削減ポイントは、図1の9月30日の販売数量11個を正常と見るか異常なもの・イレギュラーなものと見るかの違いです。異常と見ることにより、在庫を適切に判断できるようになります。

 販売数量のデータの数値が正常か異常かという判断は大切なことです。異常な販売を正常なものと認識しないよう心掛けたいものです。

【小松秀樹(こまつ・ひでき)】
NPO法人ビュー・コミュニケーションズ副理事長
1950年、秋田県生まれ。東京大学経済学部卒。2000年、通産省の支援を受け、IT技術を活用したビジネスソリューション研究会(上場企業約100社が参加)を母体に、野村総合研究所、日本経済新聞社らと共同でNPO法人ビュー・コミュニケーションズを設立。日本企業の収益を向上させ、国際競争力を上げることを目的に、AIをベースにした我が国独自の最新のIT技術の実用開発・普及に取り組む。2016年より滋賀大学特別招聘講師に就任。最新刊は『なぜあなたの予測は外れるのか――AIが起こすデータサイエンス革命』(育鵬社)。

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