朝鮮半島有事、李英和氏の優れた情勢判断(5)――抑止力としての敵基地反撃能力

地対空誘導弾ペトリオット(PAC3) (航空自衛隊HPより)

敵基地反撃能力は法理論上、可能


 李英和氏は、4月26日の参議院「国際経済・外交に関する調査会」で、北朝鮮への抗がん剤治療、つまり中国が主体となった経済制裁によってがん細胞を小さくした上で、日本は次のような方策をとるべしと述べた。

「外科手術を行って局所的に腫瘍を取り除くという、いわゆる軍事的な手段が避けられない。これは日本も何らかの形で参画する、敵地攻撃能力、先制攻撃であれ報復攻撃であれ関わる必要があるということ。この主治医はアメリカになる、執刀医はアメリカになるんでしょうけれども、補助医として日本と韓国がこの外科手術にも加わるということが求められているということです」(当日の会議録より)

 現実を直視した優れた発言である。

 この敵地(あるいは敵基地)攻撃能力について、憲法に反しないかどうかについて、政府は法理論的には可能としてきた。

 昭和31(1956)年に鳩山一郎内閣は、「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」として、攻撃を防御するのに「他に手段がない」場合に限り、ミサイル基地をたたくことは「法理的には自衛の範囲」との見解を示している。 さらに政府は、先制攻撃とは区別し、第一撃を受けたり、ミサイルに燃料を注入するなど敵が攻撃に着手したりした時点で、敵基地攻撃が可能になるとの見解も示している。

 この敵基地攻撃能力に関しては、平成21(2009)年4月から5月に北朝鮮が長距離弾道ミサイルや2度目とされる核実験を行った際に、当時の麻生太郎総理大臣が「法理論的に可能」として機運が盛り上がった時がある。

 しかし、その後の民主党政権でこの話は断ち切れとなった。

 再び自民党政権となり安倍内閣が発足し、北朝鮮のミサイル開発が飛躍的な進歩を遂げる中で、抑止力としての敵基地反撃の重要性が議論され始めたのである(以下、敵基地反撃能力と称す)。

2段階で行われるわが国のミサイル防衛


 ところで、現状のわが国のミサイル防衛は、米軍の協力のもと2段階で行われている。

 弾道ミサイルを、まず海上自衛隊のイージス艦から発射する海上配備型迎撃ミサイル(SM3)によって大気圏外で破壊する。ここで破壊できなかったミサイルを、次に航空自衛隊の地対空誘導弾ペトリオット(PAC3)によって大気圏内で迎撃するという2段階だ。

 わが国のミサイル防衛の命中精度は高いと言われているが、北朝鮮が一斉に弾道ミサイルを発射してきた場合は、撃ち損じの可能性も生じる。

 撃ち損じた弾道ミサイルに、核弾頭が積まれていたら被害は甚大となる。だからこそ李英和氏は、日本が敵基地反撃能力を持つべしと説いているのである。

 他方、敵基地反撃能力は、緻密な判断力を持つ朝鮮労働党の金正恩(キム・ジョンウン)委員長への抑止力となり得る。

アメリカの巡航ミサイル、トマホークの活用


 軍事評論家の北村淳氏は、著書『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』(講談社+α新書、平成27年)で、アメリカの巡航ミサイル、トマホークを敵基地反撃の主要装備に薦めている。傾聴に値する。

 朝日新聞は、「敵基地攻撃力 専守防衛が空洞化する」(3月31日)と、相も変らぬ社説を掲げているが、一度、李英和氏に教えを乞うべきであろう。

 李英和氏の危機感は強い。猶予されている時間は少ない。(了)

(文責=育鵬社編集部M)





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