「国の借金」と「家計の借金」を同一視する間違い(プライマリー・バランス死守は亡国への道②)

家計に例えられる国の借金


 財務省の解説では、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)とは、「税収・税外収入と、国債費を除く歳出との収支のことを表し、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけまかなえているかを示す指標」だ。

 言い換えれば、プライマリー・バランス(PB)とは、収入と支出の釣り合いがとれているのかを図る指標となっているものだ。そして、釣り合いが取れていれば、PBが均衡していることになる。

 ここで問題なのは、国の借金について一般の人が理解しやすいように、家計(世帯)に置き換えて説明するという点だろう。それは、こういう言い回しだ。「プライマリー・バランスの黒字化とは、個人の家計に例えると、借金をせずに収入(身の丈)にあった生活をし、その結果、貯金ができることです」。こんな説明となる。

 家計の説明で続ければ、「もしも、個人が借金をしていれば、世帯の収入から支出を引いた(余った)分を借金の返済に回し、なるべく早く借金ゼロの生活に戻れるようにするでしょう。国も同じです」というものだ。

 一般的に日本人は借金を抱えることを嫌がる、あるいは怖がる人が比較的多い。車や住宅をローンで購入するのはごく普通だが、アメリカのように過剰な消費を行うために借金(カードローン)をする人の割合は、まだ多くはないだろう。

 個人の貯蓄も外国に比べると高めである。これは将来に対する不安の表れで、なるべく自分でなんとかしなければいけないと考えているからだ。借金を恐れてしまう国民性の日本人に日本国の借金を世帯に例えることで、「国の借金が危険だ」という危機意識が共有されたといってよい。

国の借金は家計の借金とは違う


 しかし、ここに落とし穴がある。前述のように、家庭の借金と同じように国の借金を見てしまうことは間違っていると『プライマリー・バランス亡国論』(育鵬社)の著者である京都大学の藤井教授は語る。つまり、かりに国の借金を例えるなら、世帯ではなく企業で例えないといけないと。

「そもそも『企業』というものは、新しい店を出すなどの『投資』を行い、そこでオカネを儲けて回収しようとする。つまりたくさんオカネを使って、お金儲けのチャンスを拡大し、さらに多くのお金を稼ごうとするのが、企業だ」

「だから、大規模な投資を行う企業は、収入をどんどん増やしていく一方で、投資を全然行わない企業の収入は増えていかない。むしろ、ジリ貧に陥っていく(他の企業が成長しているケースならなおさらだ)」

 そして、企業は世帯と違い「支出を削れば収入も減る」と同時に「支出を増やせば収入も増える」存在だと藤井教授は主張する。

 これは、家計の借金と国の借金を同一視するのではなく、国の借金を企業における「投資」とみなさなければいけないというものだ。将来の収入を拡大させようと考える企業が、銀行から借金をして投資を行うのが経済の基本だ。

 だから、国の財政状況を理解する場合、まさに企業と同じように「借金」ではなく「投資」という視点で捉えないといけないということである。

(育鵬社編集部A)

プライマリー・バランス亡国論

「財政赤字は絶対悪」との思い込みを各種データから覆す、目からウロコの日本国民必読の書。





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