世界文化遺産から読み解く世界史【第44回:万国博覧会の時代――エッフェル塔】

エッフェル塔(縮小)

エッフェル塔


万国博覧会がヨーロッパにジャポニズムをもたらした


 フランス革命の頃からパリで開催されるようになったものに、さまざまな品物を集めて展示を行う博覧会があります。1849年までに11回開催されて、しだいに規模も大きくなっていきました。ベルギーやオランダなど周辺国でも開かれるようになり、フランス首相が国際博覧会(万国博覧会)の開催を呼びかけて、1851年に第1回国際博覧会がロンドンで開催されました。

 この万国博によって、世界各国の商品、工芸品がヨーロッパに集められるようになったのですが、それは、世界のヨーロッパ化、あるいは近代化が推し進められるきっかけにもなりました。それは今日のグローバリゼーションの走りであったといっていいでしょう。

 そこに東洋のものも展示されるようになり、日本の物産もたくさん展示されるようになりました。

 これが、ヨーロッパにジャポニズムをもたらしました。浮世絵がパリにたくさん入り込んで、パリの芸術家たちを喜ばせ、印象派の画家に大きな影響を与えたのです。

 その中に、葛飾北斎の『富嶽三十六景』や、歌川広重の『富士三十六景』『東海道五十三次』など、富士山の描かれた作品があり、これが人々に新鮮な驚きを与えたのです。

エッフェル塔は富士山をイメージしてつくられた

 
 フランス革命100周年を記念して開かれた1889年のパリ万国博では、このときに有名なエッフェル塔が建てられたのですが、これが、その影響を受けてつくられた塔であることがわかっています。エッフェル塔は、富士山をイメージしてつくられているのです。それは、アンリ・リヴィエールという画家が『エッフェル塔三十六景』という作品を描いていることからもわかります。

 富士山が江戸を、あるいは日本を守っているという、精神的な拠り所であることがパリの芸術家、建築家にも伝わって、エッフェル塔は「パリの富士山」として生み出されたのです。

 もちろん、日本では自然そのものの富士山であるわけですが、ヨーロッパでは、ヴェルサイユ宮殿の造営に関してすでに述べたように、人工的な自然をつくり上げるのです。エッフェル塔はまさに、人工的につくられた山、富士山なのです。人々の守り、都市の守りとしてつくられたわけです。博覧会の会期中に塔を訪れた人は200万人に上ったとされます。

 私はここにも、山、自然への憧れ、高いものをつくりたいという、ピラミッドの造営から一貫した人間の精神的な欲求を見る思いがするのです。

文化の殿堂――ルーブル美術館

 
 ルーブル美術館は、フランソワ1世が収集した美術品のコレクションをもとに、それにナポレオンの戦利品が加わり、ルイ18世やルイ・フィリップのコレクションが加わって、約30万点のコレクションとなったものです。

 そして古代シュメールから19世紀の中頃までの美術すべてを網羅したルーブル美術館が、文化の殿堂の一つとして、フランスにつくられているということは、文化史というものが、一本の軸として、フランスの歴史の中に存在したということを示しています。

(出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社)

【田中英道(たなか・ひでみち)】
東北大学名誉教授。日本国史学会代表。
著書に新刊『日本国史――世界最古の国の新しい物語』のほか『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』など多数。

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