世界文化遺産から読み解く世界史【第47回:ロシア革命の失敗――クレムリンと赤の広場】

モスクワ・赤の広場と国立歴史博物館(縮小)

モスクワ・赤の広場と国立歴史博物館


社会主義思想という幻想

 ロシアのヨーロッパ化は、彼らの一つの命題でした。歴代皇帝は多くの建設事業を起こし、ロシア正教というものがその基本としてはあったわけですが、文化そのものはカトリックに近いものでした。カトリックに憧れていたといってもいいでしょう。ヴェルサイユ宮殿を模範にした宮殿をつくり、エルミタージュ美術館にたくさんのイタリア、フランスの美術が入り込んで、人々のヨーロッパへの憧れを満たしたのです。

 スパスナクラヴィ聖堂や数多くの教会堂を見ても、ヨーロッパ風のものがたくさんさんつくられています。これはモスクワでも同じことがいえます。

 モスクワといえば、クレムリンと赤の広場が有名です。城塞を意味するクレムリンが、現在のような巨大な大城郭としてつくられたのは、モスクワ大公イヴァン3世(1440~1505)の時代です。その巨大な城壁の北東側に面する赤の広場にはレーニン廟が置かれています。

 ロシア革命後は、社会主義政権が誕生し、宗教を否定し、芸術をないがしろにしたために荒廃していきました。しかし、ソ連の崩壊後は、復興されてきています。それは、ロシアの伝統と文化の復活でもあります。

 ロシア革命の失敗は、20世紀の社会主義思想がいかに幻想であったかを象徴しています。全体主義あるいは物質主義、唯物論主義が、いかに人々の心を荒廃させるか、同時に、イデオロギーというものが、人々を律することは決してできないということを示しているのです。

(出典/田中英道著『世界文化遺産から読み解く世界史』育鵬社)

【田中英道(たなか・ひでみち)】
東北大学名誉教授。日本国史学会代表。
著書に新刊『日本国史――世界最古の国の新しい物語』のほか『日本の歴史 本当は何がすごいのか』『[増補]日本の文化 本当は何がすごいのか』『[増補]世界史の中の日本 本当は何がすごいのか』『日本史5つの法則』『日本の戦争 何が真実なのか』『聖徳太子 本当は何がすごいのか』『日本文化のすごさがわかる日本の美仏50選』『葛飾北斎 本当は何がすごいのか』など多数。

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