日本を救う水力発電イノベーション4

発電力を効果的に増強させる、ダムの「かさ上げ」

 第二の理由は、ダムをかさ上げすれば、発電するための「落差」が大きくなり、より多くの発電が可能となるから、というものである。  そもそもダムによる水力発電は、貯めた水を落下させ、その水の勢いでタービンを回し発電する、というもの。  したがって、より「高い所」から水を落とせば、より勢いよくタービンが回り、より多くの発電が可能となるのである(高い所の水は位置エネルギーがより大きく、したがって、発電量も増える、という次第だ)。  つまりダムのかさ上げは、貯水量も効果的に増やすと同時に、より高い所から水を落とすことができるようになるということから、効果的に発電量を増やすことができるのである。

既存ダムに、「逆調整池ダム」を新たに作る

「かさ上げ」に次ぐ、もう一つの効果的な既存ダムの活用方法が、「逆調整池ダム」を既存の発電ダムの下流に作るというもの。  これは、例えば宮ヶ瀬ダム(神奈川県相模原市、愛川町、清川村)に実際に導入されているものなのだが、その概要を説明してみよう。  そもそも宮ヶ瀬ダムは発電も目的の一つとして計画されていたのだが、一つの問題があった。それは、電力需要のピーク時点で求められる量の発電を行うには、「一気に大量の水を放出する」必要がでてくる。  そのため、発電放流時とそうでない時で放流量の変動が大きく、そのままでは下流河川の水位が不安定となってしまい、さまざまな弊害が生じてしまう。  しかも、一気に放流してしまうと貯水がなくなり、「ベース発電」を行えない時間ができてしまう。こうした理由から、大量の放出ができず、したがってピーク発電に対応できない、という問題があった。  そんな中、神奈川県の企業局がこの問題を解決するために行ったのが、「逆調整池ダム」(以下、逆調ダム)を、宮ヶ瀬ダムの「下流」に整備する、というものだった。 「逆調ダム」とは宮ヶ瀬ダムから放流された水の勢いを弱めるとともに一時的に「貯めておく」ことで、下流へ安定した放流を行うための小規模なダムだ。  この逆調ダムにも発電機をつけ、宮ヶ瀬ダムと合わせて一体的に次のように運用すると、「ピーク発電」と「ベース発電」の双方を実現することが可能となる。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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