「道の駅」による地方創生イノベーション4
400 万人の買い物客を集める道の駅: 富士川楽座
ギャラリーでは富士市の地元の方が個展を開いていた。 担当者によれば、このギャラリーは町中に「ギャラリー」としてつくられた施設よりも、出展者にとって人気だと言う。 なぜなら、この「道の駅」の方が、来場者が多くかつ多様だからだと言う。つまりこの「道の駅」が、地域の文化芸術振興にも役立っているわけだ。 あわせて、後のノーベル物理学賞の受賞に結びつく研究業績を残した、富士市名誉市民の戸塚洋二氏を顕彰する常設展示施設「戸塚洋二ニュートリノ館」が開設されていた。 この展示は、物理学という「堅い」教育的情報をより広く提供するものであると同時に、地元の誇りを喚起・アピールする機能も果たすものだ。 ただし、このモールの中で最大の目玉はやはり、レストランと市場だ。 レストランでは、「しらす」や「さくらえび」をはじめ、可能な限りの地元の名産品、食材が使われている。そうした地元の特産品を販売する市場は、多くの人々で賑わっていた。 また、このモールに隣接してつくられた「ふじのくに楽座市場」では、地元の提携農家から毎朝、その朝収穫したての野菜を入荷し、販売している。 それは地元の農協の指導の下で行われているとのことで、通常の全国チェーン店にはない、農協が長年培ったノウハウに基づいて新鮮かつ安心な野菜が提供されている。 地域の消費者にしてみればこうした新鮮な野菜を手に入れられる商店は限られていることから、とりわけ地域住民に大人気だと言う。 なお、「楽座」におけるこれら諸事業は、それが開設された平成12年から、民間企業である「富士川まちづくり㈱」(以下、「運営会社」と略称)が運営しているが、彼らによれば、今、非正規雇用も含めれば、この道の駅事業を通して200人以上の雇用を生み出しているとのこと。 このように「楽座」では、地元の食材や特産品が集中的に販売され、地元の産業を大いに活性化する効果をもたらしたと同時に、この地域に多くの雇用を生み出している。 さらには、地元住民を含めた多様な利用者に良質な食事や食品を提供するのみならず、科学技術情報やギャラリーを通した地域の文化芸術振興機能も果たしている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。ハッシュタグ
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