「道の駅」による地方創生イノベーション5

400 万人の買い物客を集める道の駅: 富士川楽座

 文字通り、この「道の駅」富士川楽座は、ドライバーへの休憩機能や情報提供機能以上の「付加価値」を生み出し、それらを通して「地域を活性化」させているのである。  逆に言えば、この地に「道の駅」がなく、単にSAが設置されているだけだったのなら、これらの地域活性化効果は、いずれも全く生じていなかったのである。  この点を踏まえれば、公的資金も注入したこの「道の駅事業」という官民連携事業は、極めて秀逸な地方創生事業となっているのである。

なぜ、富士川楽座は成功したのか?

 ではなぜ、「楽座」はこれだけの大成功となったのだろうか?  先にも「楽座」の買い物客数は最大で約400万人だと紹介したが、ギャラリーや展示等を見に来ているだけの来訪者を含めれば、500万人や600万人程度の人々が毎年訪れている。  大都市圏郊外の何万平米という広大な土地に巨大資本が投下されてつくられる超大型モールでも年間目標者数は1000万人程度であることを踏まえるなら、この地方部で、自治体主導による(超大型モールとの対比で言うなら)より少ない投資金額でつくられた「道の駅」が、これだけの集客を得ている事実は驚愕に値する。  しかも、自治体主導の「地域活性化」を企図した取り組みはおおよそ「地味」になりがちであり、超大型モールと対抗できるほどの力を発揮するなど、通常は望むべくもない。  その第一の秘密は、やはり「道」にある。そもそも、この「道の駅」は、大量の交通量を誇る東名高速道路沿いにつくられている。  そして彼らは、仮にその「道の駅」に何も魅力がなくとも、大量の人々が休憩のために常に訪れる。そして、彼らの多くは、休憩がてら少々の出費を厭いとわない。  折しもこの「道の駅」は、SAに隣接して設置されているから、この地に「道の駅」をつくるだけで自動的に一定の集客ができるわけだ。  しかも、この「道の駅」は都市間交通である道の駅だけでなく、地域内の交通を支える県道の沿線でもある。したがって、高速道路利用者とは異なる県道利用者からの集客も期待できる。  つまり、「商売をするときは人通りの多いところでやるべきだ」という一般的な鉄則こそ、「楽座」の成功の第一の理由なのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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