「道の駅」による地方創生イノベーション6
なぜ、富士川楽座は成功したのか?
そしてその成功の第二の理由は、「富士山」にある。 東名高速道路のSAやPAの中でも、この「道の駅」が隣接している「富士川SA」ほど、世界文化遺産の一つである「富士山」の眺望が素晴らしいところはない。 東名高速の利用者にとってこの富士山の眺望は、東名ドライブのハイライトだ。だから、通常の休憩所以上の集客がある。これが、その成功の第二の理由だ。 そして第三の成功の理由はやはり、この「道の駅」の「地域住民にとっての魅力」である。 もしも、「この富士山の眺めがよいSAが隣接している」ということだけが成功の理由なら、高速道路側からの利用者が圧倒的多数となり、県道側からの利用者はごく一部にとどまるだろう。 しかし実態はそうではない。運営会社の担当者の話によれば、高速道路側と県道側の顧客は、それぞれおおよそ半分半分だと言う。 そもそも、県道の交通量は高速道路のそれ(6.9万台)よりもはるかに少ない2.1万台しかない。 それにもかかわらず、高速道路側からの顧客に匹敵する数の利用者が訪れていることはつまり、「この道の駅をわざわざ目的地にして訪れている顧客」が大量に存在していることを意味している。 朝採れたての野菜を昼夜を問わず買える場所は、この地域にはここ以外にほとんど存在していないし、買い物も食事もできるし、ちょっとしたアミューズメント施設もある(しかも2017年には「観覧車」も、隣接敷地内にオープンしている)。 品揃えとしては超大型ショッピングモールや都心の方が魅力的だろうが、この「楽座」でしか味わえない楽しみもあるのだから、「楽座」にわざわざ行く日があってもいい、ということなのだろう。 つまり、この「楽座」の成功は、⑴大量の通過交通がある道路沿いにつくられたこと、⑵そこからの眺望が優れていること、⑶提供している商品・サービスそれ自体が魅力的であることという三つの理由によって支えられているのである。「地域活性化」の最大の原動力は「行政の意志」である
ただし、この「楽座」が単なるビジネスの成功を超えた「地方活性化の成功例」となっている最大の理由はやはり、この「楽座」の整備と運営そのものが「行政の政策」として行われた点にある。 駐車場は県や旧日本道路公団等の「道路管理者」がつくり、その他モール等の関連施設は、国(旧自治省)の補助を受けた基礎自治体(旧富士川町)がつくった。 「楽座」とSAとの接続にあたっては国(旧建設省)の特別の制度(PA・SAを活用した地域拠点整備事業)が活用されている。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』、『【令和版】公共事業が日本を救う』(育鵬社)、など多数。ハッシュタグ
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