「道の駅」による地方創生イノベーション7
「地域活性化」の最大の原動力は「行政の意志」である
そして民間の運営会社には基礎自治体(旧富士川町)や地元の商工会、農協等が出資していることから、その経営方針には「地域経済への貢献」が明確に謳われている。 これこそ、地域の産物が徹底的に活用され、「地方活性化効果」を生み出している基本的理由だ。 つまり、行政側に、地域活性化という明確な政策的意志があり、その意志の下でこの「楽座」が運営されているからこそ、単なるビジネスを超えた「地方活性化」の成功事例となっているのである。 もしも、そうした公的な意志なく、単なる利潤追求だけなら、どれだけ多くの売上があってもそれらは結局、地域外に流出し、地域活性化どころかかえって地域経済の疲弊にすらつながりかねなかったのである。 さらに言うなら、「楽座」の成功における最重要ポイントである高速道路や魅力的な眺望を持つSAに接続しつつ、県道にも接続させる場所に施設をつくる─というプロジェクトは、制度上、民間だけの力では到底できないものだ。 だからこの点から言ってもやはり、さまざまなレベルの行政の働きがなければ、この成功例はあり得なかったのである。 無論、その「楽座」の運営や、運営会社に出資している行政以外の組織、さらには販売される地域産物の生産はすべて「民間」が行っているものであるから、この「楽座」の成功は、行政の力だけでは当然ありえなかったことも付言しておきたい。 つまりこの「楽座」の成功は、官だけでも民だけでもない「官民連携」が生み出したものなのである。「道の駅」は地域活性化を導く「重要装置」である
以上の「楽座」の成功事例は、「道の駅」という枠組みに基づく適切な官民連携を図れば、「巨大資本の利潤獲得装置である超大型モール」にも対抗し得る「地方創生」が可能であることを示している。 もちろん官民連携は「道の駅」の専売特許ではないが、とりわけ地方部において「クルマ社会」がここまで進展してきた今、広域からより多くの集客を図り「域外マネーを吸収して地方の活性化を図る」ためには「道路」の活用が極めて有望であることは間違いない。 だから地方創生を図らんとするのなら、旧来型の「鉄道駅」を中心としたプロジェクトに加えて「道の駅」を中心としたプロジェクトもまた進めねばならないのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』、『【令和版】公共事業が日本を救う』(育鵬社)、など多数。ハッシュタグ
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