一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる(7)
『始まり』
2020年6月2日発売、藤田麻衣子著『一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる――願いが叶っていく58の気づき』(育鵬社)は、「オーケストラとともに歌を歌いたい」という夢を描き、20歳で上京した一人の女性シンガーソングライターが、夢を追い、叶えていく軌跡(奇跡)を綴ったエッセイである。 発売から1か月半余り。多くの方々からさまざまな感想が寄せられている。その中には、「自己啓発書」として本書をとらえて、「自分の夢を叶えるためには、どうすればいいのか」というヒントを、本書から汲み取ろうとされている方が多くおられるようである。 では、「自分の夢を叶えるためには、どうすればいいのか」ということを、本書を題材に、今後数回に分けて考えてみたい。 その第一は「潔さ」である。 「『オーケストラで歌いたいから、東京に行くね』と、勢いで名古屋から上京はしたものの、どうすればいいのか、(後略)……」 本書はこうした言葉で始まっている。 まさに「〇〇を夢見て上京……」というフレーズを地で行っている。 野球の試合に例えるなら、主審の“プレイボール”という試合開始の掛け声の後、マウンド上で振りかぶったピッチャー(著者)が、第一球に球速150キロのストレートをど真ん中に投げ込んできたような直截さだ。 編集者の私がキャッチャーだとすれば、ど真ん中のストレートの球速と、それを投げ込んできたピッチャーの度胸に、一瞬にして目を見開かされた感じだ。ちょっとした衝撃である。 「初めの1週間は、日雇いのアルバイトを入れました。」 そしてこれが最初から数えて4つめの文である。 夢を追うために上京した著者の心の中には、一点の曇りもない。あっぱれである。 しかし、この出だしだけだと、なんだか変わった人の話のようでついていけない、と思われてしまいそうだが、決してそんなことはないので、安心していただきたい。 6つめの文で、上京後に暮らし始めた家の近くの歯科医院で、歯科衛生士として働きながら、「夢の実現」をめざすようにしたことが書かれている。 その後、知り合った人に、上京した理由を尋ねられると、「オーケストラで歌いたくて。……難しいと思うんだけど」と答えていたという著者。でも、「難しいと思うんだけど」という付け足しの言葉に、言い訳がましさを感じるようになり、開き直って、「オーケストラで歌う人になりたくて、東京に出てきたの」と答えるようになったという。自信はなかったが、その言葉を口にすることで、「自分で背中を押せているようで、清々しくなった」という。 「潔さ」が「言霊」としての言葉を引き出したと言えるかもしれない。 本書の帯には、「夢を叶える〝言葉の力〟」と謳っている。 20歳で上京し、「オーケストラで歌う人になりたくて、東京に出てきたの」と言葉にするようになった著者。その時点では、「夢を叶える〝言葉の力〟」に、まだ気づいてはいなかったのだが、やがてその力を実感するようになるのである。 (文:育鵬社編集部O)
『一つ言葉にすれば 一つ何かが変わる 願いが叶っていく58の気づき』 切ない恋愛ソングや人生の応援ソングなどで若い女性を中心に老若男女の幅広いファンを持つシンガーソングライター藤田麻衣子、初の書下ろしエッセイ。 |
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