食産業インフラ・イノベーションが日本を救う7

食産業インフラ・イノベーション2 : 輸入依存農産物のための農地「開拓」

 そんな努力の一つが、鹿児島県・曽於市(大隅南地区)で行われている。この土地はシラス土壌で保水性に乏しく、開拓しづらい土地であった。  そんな中でも、長い歴史の中ではくさい等を中心に作付けされていたところ、近年になってさらなる生産力の拡大が図られた。  そして、区画整理とともに、(河川の水を農業用水に利用する)「かんがい」のインフラ整備が進められ、さらに農家の経営規模が拡大し、今日でははくさい畑だけでなく、108ha(東京ドーム23個分)もの広大な畑にさつまいもが作られている。  さらに、その多くを輸入品に頼っている「畜産業の飼料用作物」もまた35ha(東京ドーム7個分)で作られている。  そもそもさつまいもも、その一部を輸入に頼っていることを踏まえれば、この「開拓」は日本の食料自給率向上に大いに貢献するものとなっているのである。  ただし、輸入農作物の代表的なものといえば「小麦」であり、自給率向上には、この生産能力の拡充が喫緊の課題となっている。  しかし小麦は、降雨の多い日本では栽培が必ずしも容易ではなく、また、連続して同じ農地で作り続けることが難しく、「輪作」が必要である、等のさまざまな困難さがある。  だから、狭い国土では必ずしも国産小麦を拡大していくことが容易でないという。  わが国ではそうしたハンディがありながらも、政府の支援を受けた全国の民間農家の努力を通してさまざまな小麦畑が作られてきている。  なかでも日本最大規模の代表的な小麦農家が、北海道の夕張の農事組合法人勝部農場である。この勝部農場は、168ha(東京ドーム36個分)もの小麦畑。  この農場が始められた最初の頃は2.4haという極めて限られた農地であったが、その後、勝部氏の開拓努力により現在の広さにまで拡大され、1000tもの小麦を毎年生み出している。  その間、効率的なかんがい(農業用水の供給インフラの整備)、土壌改良、そして、機械の大型化、小麦の品種改良といった大規模な投資に基づく総合対策が図られ、今日に至っている。  またその過程では、政府は補助や交付金を支給することで、この農産品の生産力向上の努力を支援している。  こうして現代日本では、海外からの輸入に頼っている小麦や飼料作物のための「開拓」が続けられ、今もなお、日本の国土には、農業のためのイノベーションが加えられ続けているのである。  逆に言うなら、グローバル化が進行した状況にあわせて、国土そのもののあり方を根底から変えていく国土イノベーションがあってはじめて、私たちは生き延びていくことができるのである。 藤井聡著『インフラ・イノベーション』(育鵬社刊より) 著者紹介。1968 年奈良県生まれ。京都大学大学院教授(都市社会工学専攻)。第2次安倍内閣で内閣官房参与(防災・減災ニューディール担当)を務めた。専門は公共政策に関わる実践的人文社会科学。著書には『コンプライアンスが日本を潰す』(扶桑社新書)、『強靭化の思想』、『プライマリー・バランス亡国論』(共に育鵬社)、『令和日本・再生計画 前内閣官房参与の救国の提言』(小学館新書)など多数。
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