キレる老人 育った時代が影響か
高齢化社会に向けて社会福祉の充実が叫ばれる一方で、老人による凶悪犯罪が増えている。内閣府発表によると、暴行・傷害など粗暴犯の数は十数年前に比べて約20倍。高齢者増加数に対する粗暴犯検挙率も、日本がトップだというが……
◆現在の老人の死生観は我々と全く異なる。そのうえ人間関係が希薄なため暴走しやすい
暴走する老人事情に詳しいジャーナリスト・藤原智美氏によると、「すぐキレる」老人が急増した背景には、この世代が育った環境の問題が影響しているという。
「たとえば今の70代は’42年以前生まれで、人格形成の最初期に終戦直後の混乱を味わっている。家族や知人が死んでいく様をリアルタイムで見ているため、死生観が我々とは大きく異なるのです」
まさに生きるか、死ぬかの二元的世界観が形成されたのだ。また、青年期を’60年代に過ごしたことも、破滅的な人格形成の大きな要因だという。映画などでは美化されているが’60年代とは、貧困と暴力が横行していた。その中で成長過程を過ごし、人間的にタガが外れてしまっているのだという。
対処法はあるのだろうか?
「とにかく今の老人は人間関係が希薄。社会的にも孤立しており、話し相手が近所のスナック常連だけといった人が腐るほどいます。下の世代としては、交友関係を広げてあげるよう手助けしていくことが必要です」
【藤原智美氏】
’55年、福岡県生まれ。小説家・ジャーナリスト。すぐキレる孤独な老人の生態を描いた著書『暴走老人!』(’07年)は反響を呼び、流行語にもなった
取材・文・撮影/SPA!高齢化社会研究班
― [バイオレンス老人]急増の謎を追った【6】 ―
『暴走老人!』 老人の暴走は今日もどこかで |
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