死亡事例も…タイ製ダイエット薬にご用心
麻薬成分入り脱法ドラッグが原因の健康被害や死亡事故が多発し、6月から新薬事法が施行され規制強化への動きが高まっている。しかし、脱法ドラッグよりも危険かつ中毒性の高い「ダイエットサプリ」が堂々と出回っているのをご存じだろうか……
◆ 「飲むだけで痩せられる!」と評判、だが効果の裏には覚醒剤と同リスクが
「ダイエット薬だと思って飲み続けたら、シャブ中になった」……
一体何を言っているのかわからないが、そのとおりなのである。タイ製ダイエット薬を服用して覚醒剤中毒に酷似した症状に苦しむ人が増えている。6月から施行された新薬事法で脱法ドラッグが一斉規制される裏で、もう一つの恐ろしい事例が野放しになっているのだ。
これらタイ製ダイエット薬は「ホスピタルダイエット」「ニューホスピ」等の「ダイエットサプリ」として10年ほど前から日本国内で出回りはじめた。購入者は主に若い女性。出どころはタイ・バンコク中心部の駅に併設する大型デパート。屋外に面した小さなテナントに、タイ大手ダイエット専門クリニックの支店が入る。診察はなく、カウンターで肥満度レベルと希望期間を告げ、代金を支払えば錠剤が出てくる。病院とは名ばかりの実質「販売所」だ。販売価格は1か月分で2000円台程度。クリニックのスタッフは「パックツアーの空き時間に立ち寄る日本人観光客も多い」と語る。もちろんタイまで行かなくとも、タイ人が運営する個人輸入代行会社のサイト経由で1万数千円程度で購入でき、入手経路はこちらが主流だ。製品で有名なのは「ヤンヒー」「MD」など。なかでもMDは効果が強いと言われている。
使用者たちは「本当に飲むだけで痩せた!」と驚嘆するが、福祉保険局健康安全部薬務課によると、タイ製ダイエット薬(向精神薬等を含む無承認無許可医薬品)による健康被害は把握しているだけで平成14年以降、死亡事例を4例含め合計15例あるという。被害報告が出てからの調査のため、潜在的にはさらに多いとも言われる。
これらダイエット薬は、肥満度に応じて成分が強くなるが、最終段階で覚醒剤に酷似した成分が入る。その一つが「マジンドール」というもの。日本では重度肥満患者や、肥満が原因の重大疾患者のみに処方されるが、合成覚醒剤成分アンフェタミン類と類似する薬理的特性がある。マジンドールが含まれるものに医療用食欲抑制剤「サノレックス錠0.5mg」などがあるが、厚労省医薬食品局監視指導・麻薬対策課によると「これらは用法・用量どおりに服用しても肺高血圧症(労作性呼吸困難、胸痛、失神など)のほか、抑うつ、精神障害、振戦、幻覚、知覚異常、不安、痙攣など覚醒剤中毒に酷似した副作用が出る場合がある。タイ製ダイエット薬ともなれば、マジンドールの含有量がまったく不明であるため、危険なのは疑いようがない」という。タイには日本のように厳しい製造基準はなく、錠剤ごとに成分の割合が違ったり、別成分が混入していることもある。さらにマジンドールは甲状腺ホルモン剤との併用は厳禁だが、タイ製には両方含まれるケースも……。
ほか、同じく覚醒剤様成分の「シブトラミン」入りのものも主流だ。シブトラミンは日本では未承認だが、個人輸入でこれを含む製品を簡単に入手できてしまう。
― 被害急増![覚醒剤入りダイエット薬]の恐怖【1】 ―
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