「働け!」度重なるケースワーカーのいびりに耐えかねホモビデオに!
「働け!」。度重なるケースワーカーのいびりに耐えかねホモビデオに!
大橋智樹さん(41歳)
中学卒業後、蒸発した父親の代わりに家業の鮮魚店を切り盛り。その後、宅配便の仕分けなどのアルバイトを経て重度のヘルニアに。その後重症化し入院。生活保護を9か月間受給、のち辞退
ここまで現受給者と受給希望者について紹介してきたが、最後に登場するのは、元受給者で41歳の大橋智樹さん(仮名)だ。「生活保護のぬるま湯に一度漬かったら抜けられない」などと言われるが、大橋さんはなぜ社会復帰が可能だったのだろうか。
「生活保護は、受給自体は簡単なんですよ。区役所の窓口の職員は『借金がない、資産がない、仕事がない、健康じゃない、これだけで条件を満たしていますから、大橋さんはほぼOKですよ』と言ってくれましたし。実際本当に困ってる人には大抵認められるんです」
大橋さんは一昨年、持病のヘルニアが悪化し、動けなくなった。しかし、前日にパチンコで10万円負け、所持金はたったの3000円。銀行通帳、不動産賃貸契約書、身分証と保険証を携えて区役所に向かった。脂汗を流しながら自らの苦境を訴え、生活保護を申請した。その際の対応が、前出の職員の優しい言葉だ。
「『病院で治療が済んだら、治療費については私(窓口担当者)の名前を出せば、大丈夫ですよ』とかいろいろ気を使ってくれて、本当にありがたかったです。ただ……その後継続して受給するには幾つも面倒くさいことがありました」
つまり、病気やケガで働けないうちは温厚だが、職が見つからず、働けない心身健常者には、自立を促す意味でも手厳しい指導が行われるのだという。
「ケースワーカーの中年女性は、家の間取りをチェックしに家庭訪問に来ました。その後も『週5回はハローワークに通え』とか『家計簿をつけて提出しろ』など、ことあるごとに言ってきました。彼女は週に1回は家にやってきて『早く就職しなさい!』とか田舎のお袋みたいにネチネチとプレッシャーをかけてくるし……それだけで精神的に追い込まれるんですよ」
ただ、40代で中卒。かつ特筆した資格のない者には、安定した求人などない。それでも「ハローワークに同行して仕事をさせる!」と叫びたてるケースワーカーのご機嫌を取るように、日雇いの建築現場に入るなどして月3万~4万円程度を律義に稼いでいた。もちろんその分が翌月の保護費から引かれることも承知の上である。
「ケースワーカーが言っていましたが、『可能な限り自分で稼いで、足りない分を補うのが生活保護。だから、ずっと満額受給しているようなヤツは、”就労の意思なし”と見なされ、打ち切りの対象になる』と。彼女の言っていることが本当かどうかは僕にはわかりませんでしたが、少なくともそれにビビって一生懸命働いてました」
実際には自ら「辞退届」を出さなければ打ち切られないのだが、エスカレートする強迫に、ついには夕刊紙の三行広告で見つけたゲイビデオの求人に応募し、実際に男優として出演もした大橋さん。果たしてそこまでする必要があったのか……。
「抵抗はありましたが、そこでできたツテのおかげで、今はオカマバーで雇ってもらっています。月給は18万円ほどですが、生活保護をやめ、受給の後ろめたさとケースワーカーからは解放され、ホッとしています」
ついに自立を果たした大橋さん。ただ、その表情は物憂げだった。
― 30~40代[生活保護受給者]のリアル【4】 ―
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