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ケガで緊急給付。全快後、働く気が失せ生活保護の虜に

生活に困窮した人々に最低限度の生活を保障する”最後のセーフティネット”生活保護制度に、稼働年齢の30代、40代が殺到している。国や各自治体の財政は逼迫。制度の見直しが叫ばれ始めるなか、当事者たちそれぞれの思惑とその行く末は? ナマの声を拾った! ケガで緊急給付。全快後、働く気が失せ”甘い汁”の虜に
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山中健太郎さん(39歳) 高校卒業後は警備員と食品加工会社にアルバイトで7年ずつ勤める。33歳からは登録制の派遣アルバイトに従事していたが、ケガのため入院したのをきっかけに生活保護を受ける。受給歴1年2か月  東日本大震災に先立つ3月2日、国家の在り方を根底から揺るがすような衝撃的データが厚生労働省から発表された。同省が取りまとめた「福祉行政報告例」によれば、昨年12月時点での生活保護受給者は199万人に上り、3月現在では200万人突破が確実な情勢。日本の社会はすでに崩壊のシナリオを辿っていると言えるだろう。  このうち、注目すべきは失業を原因とする生活保護受給世帯数の急激な伸びだ。’09年12月では約12万世帯にとどまっていたが、今や25万世帯に迫る勢いなのである。しかも、その多くが30~40代の稼働年齢だというから、その病は深い。現在39歳の生活保護受給者、山中健太郎さん(仮名)もその一人だ。 「去年の3月、酔って階段から落ちたはずみで利き手を複雑骨折して入院したんです。貯金はゼロだし、仕事もできない。おまけに家賃も滞納してたし、どうしようもないから区役所の福祉事務所に電話して申請したんです」  生活保護の申請に関しては、福祉事務所の窓口で担当者が難癖をつけ、体よく相談者を追い払う、いわゆる”水際作戦”が問題視されているが、山中さんの場合は担当者が病院まで訪問しヒアリングを行い、入院から1週間もたたずに受給が決定したという。 「聞かれたのは所持金の額、通帳の残高、前月の収入など簡単な内容だけ。『保護出ますから安心してくださいね~』と言われたときは、さすがに涙目になりました」  晴れて受給者となった山中さん。ケガの完治後も月額平均で14万円程度を受け取っている。所得税、住民税、年金、医療費、水道代が免除となり、都営地下鉄や都バスはフリーパスゆえ、実態としては額面20万円弱の”正社員待遇”である。住まいはトイレは共用、風呂なしの3畳ほどで家賃は6万円。あくせく働かずに済むなら、貴族的な生活と言えなくもない。しかし、そうした揶揄を遮り、山中さんは反論する。 「そんなにいいもんじゃないですよ。今は繁華街のゲストハウスに住んでますが、隣人と折り合いが悪く、右隣のホストと左隣の外国人からドアノブにトイレットペーパーの芯を掛けられたり、変な液体を塗られたりと嫌がらせを受けてます。それで引っ越ししたいとケースワーカーに言ったら、『簡易宿泊所に行くか、路上で寝るかだ』なんて暴言を吐かれるし。あらゆることが嫌になりますよ」と嘆く。  とはいえ、本をただせば、繁華街のゲストハウスに住んでいるのは風俗街へのアクセスが便利ゆえ。受給後も月イチのヘルス通いは欠かさず、そのほかは毎日ゴロゴロしながら、気が向いたときに職安に通う日々を送っているのだとか。  しかし、危機的な状況を語る彼の表情には、切羽詰まった様子は感じられない。 「制度の仕組みの問題も大きいと思います。保護2か月目に時給800円の皿洗いのバイトが見つかり、約5万円稼いだんです。すると、翌月の受給時に役所から5万円の返還命令を受けました。汗水垂らして働いた分は支給額から天引きになる。これじゃぁ、とても働く気にはなれませんよ」  今回の東日本大震災の復興に際して、土木の仕事が大量に発生し、働く機会に恵まれるはず。その辺についての関心を尋ねると、 「きっと仕事は住み込みですよね……。ならば月給20万円。週2回の休みがあれば行ってもいいかなと思いますね」  保護費が彼を過保護にしてしまっているのかもしれない。
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山中さんの住む繁華街のゲストルーム。ベッドとテレビのほかはなく、殺風景。絶えず喧噪が聞こえてくる
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(左)生活保護受給者に配られる「フリーパス」。都バスや都営地下鉄は乗り放題。 (右)毎月1回、袋に入った現金を役所で手渡される ― 30~40代[生活保護受給者]のリアル【1】 ―
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