中国が尖閣に攻めてきても、米国は助けてくれない!『日本の国境問題』著者・孫崎享氏が提言
※主要国工業生産高(1970~2010年)
⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=313131 週刊SPA!10/16発売号「国益を最大化する[尖閣問題]の対処法」では、田中康夫・新党日本代表が孫崎氏を直撃。「米国が日本を守ってくれない」さらなる理由に加えて、「尖閣問題は国際的にどう見られているのか」「日中対立が激化すると誰が得をするのか」など、多くの日本人が知らない「尖閣問題の裏側」について聞いた。 <取材・文/尾原宏之>
尖閣諸島をめぐる日中間の緊張状態は収まる気配がなく、一向に出口が見えない。中国国内での対日強硬論は盛り上がり、ある世論調査では「日本への武力行使を支持」が9割を占めたとの報道もある。もし実際に日中が尖閣諸島で武力衝突した場合、米国は日本の味方をしてくれるのだろうか?
「残念ながら米国は、中国が尖閣に攻めてきたとしても助けてはくれません」と語るのは、元外務省国際情報局長の孫崎享氏。
「基本的に米国は、他国の国益のためには動かないのです。すでに、米国が手を出さなくても済むシステムができあがっています。日米安保条約第5条には『日本国の施政の下にある領域』で武力攻撃があった場合、『米国は自国の憲法に従って対処する』と書いてあるんです」
NATO(北大西洋条約機構)の場合は加盟国が攻撃を受ければ即応できるが、日米安保の場合は米国議会の承認を待たなければならない。「尖閣は安保の範囲内」という米国要人の発言が続いているが、現実的には「日本が期待するほど米国は動いてくれないだろう」(孫崎氏)という。
「それだけではありません。2005年に『日米同盟 未来のための変革と再編』という文書が日本の外務大臣・防衛大臣と、米国の国務長官・国防長官との間で交わされたのですが、それによると『島嶼の防衛は日本が自分でやる』ということになっています。ということは、仮に中国が尖閣に攻めてきたとします。そこで日本が守りきれなければ島の管轄は中国に移る。そうなると、尖閣はもう日米安保の対象外になってしまう。つまり、中国にいったん武力で奪われれば、日本は独力で奪還しなければならないのです」
孫崎氏は「米国が日本を助けない」もうひとつの理由は、経済的な要因が大きいと語る。米国の対中輸出額は2007年に対日輸出額を抜き去り、その差は広がる一方だからだ。
「米国にとっても日本にとっても、今や中国は最大の輸出先。EUや韓国も事情は一緒です。各国が中国市場でしのぎを削っているなか、日本は尖閣問題で中国市場から撤退しようとしている。これは各国にとっては、日本企業のシェアを奪う大チャンスです。さらに、中国の工業生産額は’10年に米国を抜きました。このことは日本ではあまり認識されていませんが、100年以上続いた“米国の時代”の終わりを告げる世界史的な大事件です。今後も、輸出入ともに米中の経済的な結びつきは高まっていくでしょう。米国にとっては中国との経済関係が最重要課題。日本よりも中国との関係を優先させることは明らかです」
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