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もうひとつのWBC「野球バカ世界一決定戦」

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NYにあるMLB Fan Caveのスタジオ。15ものモニターや大型スクリーンが設置され、ファン代表はここで野球三昧の日々を過ごす

「野球の世界一決定戦」WBC開幕まで1ヶ月を切った。参加16か国のメンバーはほぼ出揃い、いよいよ開幕を待つのみとなったその裏で、もうひとつの熱い「代表争い」が繰り広げられている。  WBC参加16か国の「ファン代表」を決める戦いだ。  メジャーリーグが2年前からはじめたソーシャルメディア(SNS)プロジェクト「MLB Fan Cave」。MLBのシーズン中、1万人を超える応募者から選ばれた数名のファン代表がNYのスタジオで生活しながら、1800試合に及ぶシーズン全試合を観戦し、ツイッターやFacebook、ブログで情報発信を行う何ともユニークな取り組みだ。従来のマスメディア報道とは異なる、ファン目線からの等身大の情報発信により、若年層や女性など新たなファン層の開拓を狙っている。  第3回のWBC開幕に際し、MLBはFan Caveの「WBC版」を立ち上げた。参加16か国から各国の「ファン代表」を1人ずつ募集。選ばれし16人の「ファン代表」は、大会中はNYのスタジオに常駐し、SNSで情報発信やメディア対応を行う。  1月に締切られた募集には、ファン代表の座を狙う各国の熱い野球オタクたちが渾身のPRビデオを作成し、現在、選考が大詰めを迎えている。 ⇒【PRビデオ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/385734 ※オーストラリア・ファン代表を狙うPRビデオ。クオリティの高さから気合いの入れようがヒシヒシと伝わってくる。どこの国にも野球バカはいるものだ! http://www.youtube.com/watch?v=t1SNjbaL2Lg  NYのスタジオには野球観戦用のモニターだけでなく、DJブース付き音楽ルームやビリヤードを備えたゲーム部屋、さらには完全予約制のヘアカットサロンなどを完備。MLB選手や、セレブを定期的に招いてイベントやパーティーなども行われる。ファン代表には、あくまでファンとして“野球に囲まれた暮らし”を満喫してもらいながら、情報発信に専念して欲しいというのがMLBの企画意図だ。  SNSの活用は、MLBが近年最も注力しているマーケティング施策だ。昨年のオールスターゲームではクラブハウスにPCが設置され、出場選手たちが試合中にツイッターでファンと交流を図るという史上初の大胆な取り組みを実施。また今月9日には、日本でも人気の高いボストン・レッドソックスが30球団初となる日本語での球団公式ツイッターアカウントを開設(https://twitter.com/redsoxjp)。  マスメディアを介さずに、コンテンツホルダーが世界中のファンと直接コミュニケーションを図る流れが加速している。
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昨年のオールスターでは、選手達がユニフォーム姿のままツイッターでファンと交流。今後はツイッターアカウントを持っていることがオールスター出場の条件?

 日本球界でも近年、SNSの活用に力を入れているチームもあるが、その多くがあくまで「球団によるSNSを通じた情報発信」に留まっているのが現状。SNSマーケティングの本質は、ファン(顧客)とフラットなコミュニケーションを図り、そしてファンをビジネスに参加させること。ファンを「メディア」そのものにしているMLB Fan Caveの取り組みは、スポーツ界におけるSNS活用のベスト・プラクティスといえる。  今回のWBCでは、TVや新聞の報道を追いかけるだけでなく、各国のファンたちがどのように大会を盛り上げていくのかにも注目して欲しい。もちろん、あなた自身がその一員になることも可能であり、まさにそれはMLBが望んでいる「参加型WBC」そのものだ。 <取材・文・撮影/スポーツカルチャー研究所> http://www.facebook.com/SportsCultureLab 海外スポーツに精通したライターによる、メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多様な魅力(=ダイバーシティ)を発信し、多様なライフスタイルを促進させる。日刊SPA!では3月に始まるWBCや、MLBの速報記事を中心に担当
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