AIIBの創設で楽観!? 中国で「株ブーム」が起きている
中国株式市場が高騰している。年始以来、3000ポイント前半で推移していた上海総合指数は、3月から右肩上がりで続伸し、20日には一時、7年ぶりとなる4300ポイント台をマークした。
中華人民毒報】
行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売
今年1~3月期の実質成長率が7%にとどまるなど、中国経済はスローダウンも指摘されているが、対照的な株価高騰には、バブルの懸念も付きまとう。
ところがそんなことはお構いなしに、庶民も巻き込んでの「株ブーム」が起こっている。広州市在住の日系工場勤務・戸田誠さん(仮名・46歳)も話す。
「近所の公園では、老人たちが昼間から賭けマージャンをしているのをよく目にしましたが、最近はとんと見かけなくなった。株が高騰し始めて以来、みんな家で株のネット取引をしている。朝や昼間も飲茶レストランに行けば、老人たちはみんな株の話をしている」
年寄りが余剰資金で株取引しているくらいならいいかもしれない。しかし、重慶市の飲食店経営、土田耕平さん(仮名・43歳)によると、株式市場に“オールイン”してしまう投資家も少なくないとか。
「仕事中いつもスマホ片手に株取引をしていたコックがいたんですが、3月末になって『取引に集中したい』と仕事を辞めてしまいました。また、ある知人も同時期に自宅を売って賃貸に引っ越し、売却益をすべて株に突っ込んでました。いつものことながら、中国人はやることが極端すぎます。その知人は昨年、理財で大損したのに、まったく学習してませんよ」
庶民も浮かれる株高だが、中国株に詳しいアナリストの田代尚機氏はこう分析する。
「利下げや預金準備率引き下げなどの金融緩和や、株の信用取引の規制緩和、さらに不動産や理財からの投資マネーの還流など、複数の要因が指摘されています。それらに加え、私は習近平政権による反腐敗運動も株価に大きな影響を与えていると思います。最近の株式市場を買い支えているのは、中国国内の個人投資家です。証券会社は過去最高ペースで口座開設が続いていると言います。個人投資家は、既得権益を打ち破ろうとする現政権に対し、『経済を含めた全面的な改革をやってくれる』との期待感がある。期待があるうちは、中国株式市場がハードランディングすることはないはずです」
一方、中国在住フリーライターの吉井透氏は、世界を賑わすAIIB(アジアインフラ投資銀行)の創設も株価に影響を与えていると指摘する。
「今まで国内が投資先だった理財も、今後は海外のインフラ開発事業に向かうことになる。市場には、AIIBの創設により、中国国内のだぶついた資金が開発事業の名の下に海外に向かい、その事業を中国企業が受注することで、中国経済に大きな恩恵をもたらすという見方がある。一方でAIIBの傘下にファンドを設け、各国の政府系投資ファンドから幅広く資金を集める方針が明らかになりましたが、海外ファンドの資金も中国企業に流れることになる。創設時のルールに関する議論がまとまり、全体像が見えてくれば、株価がますます上がるのでは」
日本の株高とは様相が異なる中国の株高。根拠が不明瞭なだけに一寸先は闇のようにも見えるが。 <取材・文/奥窪優木>
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