子育て世代が住みたい街で起きている“豊洲内格差”とは何か
バブル崩壊以降、再開発により都心回帰が進行する東京都心部。なかでも、注目を集めているのが湾岸エリアだ。かつて企業の工場が立地していた江東区・港区・品川区の沿岸部は、2000年代前半からタワーマンションが建ち並び、域内人口が急激に上昇した。
特に江東区豊洲は、ららぽーとをはじめとした商業施設が充実していることに加え、銀座や大手町など勤務先や繁華街へのアクセスが抜群。そのため、比較的裕福なファミリーが好んで移住している。
そんな豊洲地区でいま起きているのが、急激な人口増加に伴う小学校のマンモス化だ。2006年まで豊洲地区に一校しかなかった公立小学校の数は、2016年現在で3校にまで増えている。
2007年開校の豊洲北小学校は、タワーマンションが建ち並ぶエリアが通学区ということもあり、児童数が1100人をこえるマンモス校にまで拡大。校舎増築に伴って縮小した校庭スペースの確保のために、周辺の公園を活用する取り組みが話題となった。
さらに2015年には豊洲西小学校が開校。こちらは開発が続くゆりかもめの新豊洲駅や今年11月移転予定の東京都中央卸市場がある豊洲五丁目・六丁目が通学区で、児童数の大幅な拡大が見込まれている。
このように、全国的に人口減少に転じる我が国の中で例外的に人口が増え続ける豊洲エリアだが、住民たちの声に耳を傾けていると、発展の影でストレスを抱える親たちも少なくないという。
たとえば、タワーマンションに住む新住民が多い豊洲北小・豊洲西小の学区と、もとからこの地域に住む旧住民が多い豊洲小では、クラスの風景がやや異なるという。
「豊洲小の学区は、タワーマンションに住む家庭の子と都営住宅に住む子が共存してるんです。親の階層が異なるので、学校でさまざまな価値観に触れられる。一方、豊洲北小は親の階層にはっきりとした偏りがあります。子どもたちの着ている服も全然違う」(35歳・男性・豊洲在住歴2年)
「都営住宅の子とは遊ばせたくない家庭は、子どもが豊洲小学校にあがる前にわざわざ数百メートル先の豊洲北小の学区に引っ越すんですよ。あまり知られてないでしょうが、子どもに通わせる小学校のために豊洲内で引っ越すケースは珍しくありません」(41歳・男性・豊洲在住歴1年)
豊洲地区に住んでいない者からすれば至極どうでもよい話だが、当事者たちにとっては看過できない大問題。なかには、豊洲住民の不毛な対立に辟易して引っ越す家庭もあるという。
昨年まで豊洲住民だった子育て中の男性(30歳・大手町勤務)に、移住先について聞いてみた。
「豊洲からの引越し先として選んだのは、同じ江東区の東陽町。区役所をはじめとして公共施設が多く、便利な街というのがその理由です。木場公園で子どもを思い切り遊ばせることができるし、アリオなど商業施設も充実しています。豊洲のような不毛なマウンティングや選民意識がないので、今ではのびのび暮らせていますよ。豊洲から引っ越してきた人とはよく会います。朝の満員電車も10分ほどで開放されるので我慢できるレベルというのもポイントです」(30歳・男性・東陽町在住)
一口に「子育て世代に人気のある街」といっても、そこには外部からは見えない住民間の問題が隠されている。
特に、それがマスコミや不動産ポータルサイトが喧伝する「住みたい街」の場合は尚更だ。引っ越しを検討する人は、行動に移る前に住民のリアルな声に一度耳を傾けてみるのがよいかもしれない。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
豊洲は人口増加により小学校が次々開校
タワマン家庭は都営住宅の子と遊ばせない
豊洲に辟易したファミリーの移住先は…
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