パイパーが求めた映画というリング――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第66回
“レッスルマニア3”を最後にWWEのリングからいったん姿を消したパイパーは、映画『ゼイリブ』(ジョン・カーペンター監督)でハリウッド作品に初主演。異星人と地球人の闘いを描いた単純明快なSF映画でアクション俳優としての道を歩みはじめた。
パイパーは現役時代の250ポンドのウエートを220ポンドまでスリムダウンし、スクリーンのなかを動きまわった。アクション・シーンではボディースラム、クローズラインといったプロレス技を使うこともあったが、基本的にはできるだけプロレスをイメージさせない役づくりを徹底した。
ニュース映像やCMに隠されたサブリミナル・メッセージの恐怖を風刺した映画『ゼイリブ』は評論家筋から“ちいさな衝撃作”としての評価され、パイパーの演技もそれなりの評価を得たが、主演第2作となった『ヘル・カムズ・フロッグ・タウン』(J・カーペンター監督)は、ワースト・ムービー(最低の映画)として酷評された。
パイパーはその後、プロレスのリングへのカムバックと引退を何度となくくり返すことになる。パイパーがリングに上がるたびにビンスは“カミング・アウト・オブ・リタイアメントComing out of retirement”という表現を用い、そのカムバックをポジティブなストーリーとして演出した。
アメリカでも日本でも、プロレスラーにとって“リタイア”と“カムバック”は一対のコンセプトになっているのである。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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