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北インド秘境で「宇宙に住んでいる」と実感した――小橋賢児・僕が旅に出る理由【最終回】

それからの残りのトレッキングはまるでどこか他の惑星にでもいるかのような不思議な時間の中で、今ある呼吸を噛み締めながらひたすら一歩一歩進んでいった。 北インド秘境で「宇宙に住んでいる」と実感した――小橋賢児・僕が旅に出る理由【最終回】終わってみると標高4000メートルの山道を約70kmも歩いていた。 北インド秘境で「宇宙に住んでいる」と実感した――小橋賢児・僕が旅に出る理由【最終回】僕がインドにきてから3ヶ月。行く宛もなくさまよいながら一歩一歩進んでいった。 飛行機であれば30分でいけるところをボロボロのバスで何日もかけて走り、心地のよいベットで寝るよりも500円の安宿を選んだ。気づけば想像以上に多くの場所へ行き、おかげて様々な人や景色に出会う事ができた。きっと人生も同じで、一つ一つであった出来事を噛み締めながら一歩一歩進むことで想像もしなかった場所へ辿りつくのだろう。 綺麗な景色、美しい場所は世界に沢山あれど、なんども見ているとやがて感動は薄れていく。だからこそそこに辿りつくプロセスに本当の価値が産まれる。 簡単に成功、簡単に感動。そんな簡単なものになんの価値があるのだろうか。 3ヶ月なんて人生のほんの一瞬にしかすぎないし、旅先での凝縮した奇跡の連続が日常でずっと続く訳ではない。ここにきて何が変わったかなぁんてことはわからないけど、この宇宙にある全ての事が同時に存在しているようなインドでの体験は、僕の両極の幅を広げてくれたのは間違いない。 ただ一つ思うのは自分の知らない世界や感覚をしればしるほど、自分自身の真ん中というものが見えてくるし、より世界はシンプルに見えてくる。旅した僕がこんなこというのも変なのだが、きっとどこかへ旅することが大事なのではなく、例えば夜空を見上げることだったり、家族や仲間の愛を知る事だったり、日常の中で見過ごしている沢山の事に目を向ける事の方が大事なんじゃないかって事。 時間がないだとか、お金がないだとか嘆いているよりも日常にあるワクワクすることやキラキラしたものを自分なりに見つけることの方がよっぽど素敵な人生じゃないか。 もちろん時に旅は自分の常識をぶっ壊し、奥底に眠っていた新たな自分の感覚をも呼び覚ましてくれるだろう。そんな気分になったら、このカオスなインドにきてみるといいと思う。世界が変わろうともインドの本質はきっとこれから何十年、何百年と変わらないと思うから… いつか、だれかにそんな時がやってきた時はこの旅のアーカイブを少し想いだして読んでいただけたら幸いです。 最後にネット記事だというのにこの長い文章に最後までお付き合いしてくださった読者の皆さん、いつも〆切間際の提出に冷や冷やさせながらも温かくご対応いただいた日刊SPA!金泉俊輔編集長、そしてこのご縁をつないでいただいた永谷さん、この場を借りてお礼を言わせてください。本当にありがとうございました! このインドでの旅での経験をエンターテイメントの形に変え近い未来、必ず皆様にお届けします。いつかその日まで。 北インド秘境で「宇宙に住んでいる」と実感した――小橋賢児・僕が旅に出る理由【最終回】 2016年 春  小橋賢児 小橋賢児こはしけんじ●俳優、映画監督、イベントプロデューサー。1979年8月19日生まれ、1988年、芸能界デビュー。以後、岩井俊二監督の映画『スワロウテイルバタフライ』や NHK朝の連続小説『ちゅらさん』、三谷幸喜演出のミュージカル『オケピ!』など数々の映画やドラマ、舞台に出演し人気を博し役者として幅広く活躍する。しかし、2007年 自らの可能性を広げたいと俳優活動を休業し渡米。その後、世界中を旅し続けながら映像制作を始め。2012年、旅人で作家の高橋歩氏の旅に同行し制作したドキュメンタリー映画「DON’T STOP!」が全国ロードショーされ長編映画監督デビュー。同映画がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティ アワードとSKIPシティDシネマプロジェクトをW受賞。また、世界中で出会った体験からインスパイアされイベント制作会社を設立、ファッションブランドをはじめとする様々な企業イベントの企画、演出をしている。9万人が熱狂し大きな話題となった「ULTRA JAPAN」のクリエイティブディレクターも勤めたりとマルチな活動をしている。
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