エンタメ

「女子大生シンガー」の刺傷事件を「アイドル」と報道することの怖さと誤解される“事件の本質”

 痛ましい事件が起こった。シンガーソングライターとして活動する女子大生の冨田真由さんが21日、東京都小金井市本町のイベント会場が入る雑居ビル入口で、ファンの男とされる岩埼友宏容疑者に刃物で刺され、意識不明の重体となった。何よりも心配なのは冨田さんの安否だが、連日テレビや新聞、雑誌では「アイドル」の刺傷事件と報道された。冨田真由さんは「アイドル」なのか?

冨田真由

冨田真由さんのTwitterアカウントより

「アイドルとファンの事件」として世間に広がる怖さ


 またアイドルのファンがやらかしたのか――連日の事件報道を見た世間の人々の多くはこう感じているだろう。そして、こうした“報道”によりまず思い出されるのは、2014年5月25日に発生したAKB48の握手会襲撃事件だ。岩手県滝沢市の岩手産業文化センターで握手会を開催していたAKB48のメンバー2人とスタッフ1人が、のこぎりを持った男に切りつけられ、負傷した事件である。

「握手会襲撃事件」の犯人は当時24歳で青森県十和田市に住んでおり、同年1月に仕事を失っていた。犯行動機はテレビでAKB48を見て「収入が多い」「自分とは正反対」などと不満に思ったことだったという。5月に岩手県でAKB48の握手会が行われることを知った男はその参加券を入手し、犯行に及んだのだ。この事件は、決してアイドルとファンの距離感による問題から起きたものではない。

 そして、先日の小金井市の事件で逮捕された岩埼友宏容疑者は「冨田さんに以前プレゼントを渡したが、送り返され憤慨してやった。殺すつもりだった」と供述しており、動機は冨田さんへの不満や嫉妬心だったことがわかる。さらには「声をかけたが無視され、追いかけていった」という発言から、ストーカー被害があったことも推測される。このニュースが「女性アイドル」「アイドル刺傷」の事件として連日報道されたのは周知の事実だろう。そして、メンバーとファンが握手で交流できる「アイドル文化」は再び批判されることになった。

 はたして、被害者の冨田真由さんは「アイドル」なのだろうか?

 確かに、冨田真由さんには2011年7月から5人組アイドルグループ「シークレットガールズ」のメンバーとして活動していた過去がある。しかし現在は、事務所に所属しないフリーのシンガーソングライターとして都内でライブ活動を行なっており、ファンのひとりも「真由さんがアイドルを自称したことは一度もないのではないか」と話す。こうした経歴を見れば、少なくとも“現役のアイドルではない”とわかる。せめて「元アイドル」と報道するのが適切な配慮ではないか。

 一方で、岩埼容疑者とされるTwitterアカウントからは「女性シンガーソングライター好き」と推測されている。女性シンガーの黒木渚にも執拗にリプライをしていたり、大森靖子の歌詞を引用していたりと、話題に出るのは女優やシンガーばかりで、アイドルグループやソロアイドルに対する発言は見当たらない。

次のページ 
事件の本質は「ストーカー問題」だ

1
2
3




おすすめ記事