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「女子大生シンガー」の刺傷事件を「アイドル」と報道することの怖さと誤解される“事件の本質”

守ってくれる人はいなかったのか

 先述のTBSラジオ「荻上チキ・Session-22」において、吉田豪氏からは「事件の本質を見誤っている」との指摘があった。ラジオ内で吉田豪氏は「実はアイドルの現場よりも怖いのは、女性シンガーソングライターの現場だ」とした上で、その理由を「アイドル現場だったらマネージャーがいるから最低限は守ってくれる人がいるんですけど、アンダーグラウンドなギター弾き語り女子シーンだと、一人でやるしかないんですよ。守ってくれる人がいない」と説明している。  どうやら、フリーのシンガーソングライターとして活動する冨田真由さんにも守ってくれる人がいなかったようだ。岩埼友宏容疑者本人と思われるTwitterのアカウントから執拗に嫌がらせ発言を受け、警察にも相談していたという冨田真由さんの周りの“異常”に、誰も気づくことはできなかったのか――。  実際に「アイドル」を定義するのは難しい。AKB48のブーム以降、東京だけでなく全国各地にアイドルグループが誕生した。街のいたるところでアイドルグループのライブを目にするようにもなり、世間一般には若い女性たちが歌ったり踊ったりしている活動はすべて「アイドル」と捉えられても不思議ではない。だからこそ“事件の本質”を見誤ることのない、真摯な報道をすべきではないのか。  これは誰にでも起こりうる事件だ。そして、これから語られるべきは「ストーカー被害への対策」なのではないだろうか。こうした痛ましい事件が繰り返されないことを、ただただ祈るばかりだ。 <取材・文/北村篤裕>
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