「ピラミッド建設が日本経済を救う」はなぜ正しいのか?
―[資本主義の限界]―
日本経済再生への足取りは鈍い。日本経済はどうしたら再生できるのか。「ピラミッドの建設が日本経済を救う」と、一見バカバカしい主張を論理的に語るのは、新刊『資本主義の限界』を上梓する名城大学都市情報学部の木下栄蔵教授だ。
――アメリカ大統領選ではトランプが共和党候補となり、フィリピンでも強権的なドゥテルテが大統領となり、トルコではクーデーターが未遂に終わり、国民は強権的なエルドアン大統領を支持しました。世界的に政治は「独裁型」が求められている風潮を感じます。
木下:「反の経済」の特徴のひとつに、政治体制が帝国主義的になりファシズムが台頭することがあります。日本でも大正バブルがはじけ、「反の経済」に陥るとかつてないほど軍部が影響力をもちました。なぜ、「反の経済」のもとでは民主主義が退潮し、強権的な政治体制が人気を博すのか? それは、「反の経済」では所得の二極化が進むからです。
――「反の経済」とは、経済が「供給>需要」となったデフレギャップの状態でした。なぜ、そこで所得の二極化が進むのでしょうか。
木下:お金が回らないからです。「正の経済」では企業は銀行からお金を借りて積極的に設備投資し、消費者も財やサービスを購入します。お金は銀行に滞留することなく、社会を循環するため、企業の売り上げは上がり利益も増えるので消費者の給与も上がりやすい。その結果、富の配分は正規分布に近づいていきます。ところが、「反の経済」ではお金が循環しない。企業は新たな投資よりも負債の返済を優先し、消費者は財やサービスを買うよりも預金を優先する。ケインズのいう「貯蓄のパラドクス」が働いて、給料は上がりにくくなってしまうのです。
――その結果、「正の経済」では中流だった層が「反の経済」では下流に転落する可能性が高まると?
木下:そのとおりです。しかも、日本では人類史上初めての「反のバブル」が発生しています。株式市場や国債市場に限定された局所的なバブルですから、その恩恵を受けるのはごくひと握りで株を買う余裕資金のある人だけです。その結果、富めるものはますます富み、所得の格差が拡大していくことになります。ごくごくわずかな超富裕層が社会全体の富の大部分を握り、多くが中流層から下流層へと滑り落ちる瀬戸際に瀕している。不平等な富の偏在に不満を持った人たちに支えられているのがトランプであり、ドゥテルテやエルドアンといった政治家なのです。
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1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。編集プロダクション「ミドルマン」所属。株、FX、仮想通貨など投資関係の記事を幅広く執筆。著書に仮想通貨の入門書『ヤバイお金』(扶桑社)、『FXらくらくトレード新入門』(KADOKAWA)など
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