更新日:2022年07月24日 16:51
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日米欧の経済停滞は「資本主義の限界」なのか?

―[資本主義の限界]―
 日本とユーロ圏でマイナス金利となり、アメリカも次なる利上げに踏み込めないでいる。金利の否定は資本主義の否定にも等しい。やはり資本主義は限界を迎えているのか? 新刊『資本主義の限界』において、「『正と反の経済学』によって『限界』を突破できる」と指摘している名城大学都市情報学部の木下栄蔵教授に聞いた。
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名城大学都市情報学部・木下栄蔵教授

――最近では「資本主義は戦争によってしか発展できない」とする、思想家の内田樹氏と政治学者の白井聡氏の対談が話題になりました。資本主義限界論がここそこで聞こえてきます。 木下:私はそうは思いません。それを説明するのに好都合なのが、私が提唱している「正と反の経済線」です。 ――「経済線」とはどんな線なのでしょうか? 木下:需要と供給の差をラインに示したものです。この線が原点よりも上にあればインフレギャップが存在し、下にあればデフレギャップが存在していることを示します。気をつけてほしいのは、「高い水準にあるから高成長」「低い水準にあるから成長していない」といったように経済の規模や成長率を示す線ではないということです。その国の経済がインフレギャップなのか、デフレギャップなのかを示したシンプルなラインです。
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木下栄蔵・著『資本主義の限界』P55より

――を見ると、日本が高度経済成長期にあった時代も経済線は横ばいですね。 木下:この時代、細かなインフレギャップやデフレギャップ、あるいは好況や不況はありましたが、基本的には大きな需給ギャップは発生せず、日本経済は発展していきました。それが大きく変わったのは1985年のプラザ合意です。急激に円高が進み、「円高不況」「円高デフレ」となりました。そこで当時の澄田智日銀総裁は政策金利を引き下げました。これがインフレギャップを発生させ、平成バブルの元凶となりました。 ――1989年の大納会、日経平均は今も破られていない史上最高値の3万8915円をつけました。 木下:まさにバブルのピークです。ところがそれ以降、ソ連の崩壊などパラダイムの転換となる大事件が続き、日本経済も大きな転換点を迎えることになります。バブル崩壊です。富の先食いであるバブルは必ず弾けます。戦後ずっと「正の経済」にあった日本経済ですが、バブル崩壊後に「反の経済」へと遷移しました。
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「失われた20年」をいまだに解消できていない日本
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1975年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。編集プロダクション「ミドルマン」所属。株、FX、仮想通貨など投資関係の記事を幅広く執筆。著書に仮想通貨の入門書『ヤバイお金』(扶桑社)、『FXらくらくトレード新入門』(KADOKAWA)など

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資本主義の限界

日本経済が延々と低迷を続ける理由は「たった1本の経済線」で解き明かせる!

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