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ビッチと罵られサークルから追い出される女【サークルクラッシュ事件ファイル①】

8月4日(土)「夏休み前の打ち上げ飲み会にて」  その日の飲み会は盛り上がり、最初は座敷の席が決まっていたが、次第にバラバラになって人が入り乱れるようになった。どさくさに紛れて仲元の隣に座りに行った加奈子は酔いの勢いで仲元にしなだれかかる。 「加奈子ちゃん、大丈夫?」  仲元は心配して水を飲ませるのだが、 「ごめんなさい、酔っぱらってフワフワしちゃって……」  加奈子の勢いはエスカレートし、仲元に抱きついた。仲元は加奈子のことを心配しながらも、抱きつかれてまんざらでもない、という様子だった。 8月25日(土)「夏休み中の旅行にて」  旅館での夜。加奈子は仲元にメールし、こっそり二人で抜け出していた。仲元も既に加奈子の好意には気づいていた。誰もいない砂浜で、二人はキスをした。その後二人が旅館に帰ってくるまでに何があったか、知っているのは二人だけだった。 8月26日(日)「夜の花火にて」  旅行中、佐竹は加奈子が一人になるたびに加奈子に話しかけていた。みんなで花火をしていた夜、佐竹は加奈子を呼び出し、告白する。加奈子はそれに対し、 「実は好きな人が……」  と言うわけでもなく、 「ありがとう」  と言いながら手を握るだけだった。 8月30日(木)「騎士の誕生」  この日、高橋は加奈子に呼び出された。 「こんなこと、高橋君にしか相談できないんだけど……実は、佐竹先輩に付きまとわれていて、困ってるの」  加奈子は佐竹からのメールを恣意的に切り取り、高橋に見せた。高橋は加奈子の言葉を鵜呑みにし、「僕が加奈子ちゃんを守らなければ」という庇護欲のもと、加奈子への気持ちを強めていった。  ここからがクラッシャーの本領発揮である。とにかくグイグイと距離を詰めてくる。飲み会などのアルコールの入った場でボディタッチが激しいのはその代表例だ。こういう場合、条件が揃って「密室」さえ作られてしまえば簡単にセックスにも至るだろう。  そんな加奈子に佐竹も高橋も「引っかかってしまった」と言えるだろう。佐竹の告白に対して、加奈子は曖昧な態度を取る。承認欲求から佐竹を「繋ぎとめておきたい」という気持ちもありつつ、名目上は仲元と「付き合っている」という関係になっていたからだ。ここではっきりと「二股」という選択肢を取るクラッシャーもいるかもしれない。しかしここで「断る」という選択にならないのがクラッシャーらしいところだ。  煮え切らない態度を取る加奈子に対して、佐竹は積極的にアプローチをしていく。しかし、加奈子はそんな好意さえも逆手に取り、それを「ストーカー」扱いして高橋への相談に用いた。このような行為を揶揄して加奈子は「相談女」※などと呼ばれることもある。そして、加奈子を守るナイトとなった高橋は「童貞騎士」と化してしまった。 ※恋愛相談すること自体が悪いわけではない。問題なのは、恋愛対象でもない男からの承認を得るために「相談」という方法を取ることだ。クラッシャーは「同性の相談相手がいない」ことが多く、必然的に恋愛相談ができる相手が異性に限られてしまう。女の方はただ相談しただけであっても、相談された男は「僕は頼られている」、「この子を守らなければ」などといった勘違いでクラッシャーに惚れてしまう。クラッシャられの誕生だ。加奈子の場合はそれを意図的にやっているのだろうが。  この事態に一部のサークル員は気づいていた。 「あいつ、高橋と仲良い風に見えて実は仲元に行ったよな」 「飲み会でも薄着でベタベタ触ってくるしな」 「ビッチだよな」  佐竹もまた、サークルで仲のいい男たちに 「あいつはヤバいし、やめといた方がいいよ」 「別に加奈子に行かなくても他の女がいるよ」  などとアドバイスされ、事なきを得ていた。数少ない女子部員たちも加奈子のビッチ性に気づき、男たちと結託していた。  しかし、恋は盲目。高橋はそんな加奈子のことを見抜けず、理想化してしまっていた。加奈子は高橋の好意に気づいており、弄んでいた。
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ある部員の家にて
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