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「ヒップホップは本から学んでもいい」【晋平太×R-指定のフリースタイル対談・前篇】

『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)が人気を呼び、熱いブームとなっているMCバトル(ラップバトル)。そのMCバトルの最高峰・ULTIMATE MC BATTLE(以下、UMB)の全国大会で2連覇を成し遂げた実力者・晋平太が、初の著書『フリースタイル・ラップの教科書』を上梓した。晋平太の後にUMBを3連覇したR-指定と、“本邦初のラップの教科書”を書き下ろした理由から、広く一般層まで巻き込んだ現在のMCバトルシーンの成立背景を語った。

卓越したスキルでシーンをけん引してきた2人が、存分に語り合った(写真左/晋平太氏、右/R-指定氏)

――MCバトルが大きなブームとなっていますが、フリースタイル・ラップの入門書というのは、過去にはありませんでしたよね。

晋平太:「ヒップホップは習うもんじゃねえ!」って考え方もあると思うけど、俺も若い頃はKRS‐ONEの『サイエンス・オブ・ラップ ヒップホップ概論』って本を読んで勉強しました。だから、『フリースタイルに興味を持った人が手に取れる本があってもいいんじゃないか』って思っていたんです。

――晋平太さんは本の中で「R-指定がMCバトルのレベルを更新した」と書いていましたが、特にどの部分がすごかったんでしょうか?

晋平太:まずはワードセンス。ダントツにボキャブラリーの数が違ったし、チョイスしてくる言葉が、コンビニの商品だったり、漫画家の名前だったり、これまでのMCバトルじゃあり得ない角度のものだったんです。内容もカラフルで、響きも圧倒的にキャッチーだから、パンチラインになりやすい。記憶に残っちゃうんですよね。そこが「超新しい!」と思っていました。

R-指定:ただ、俺がMCバトルに出る前の時代は、何かひとつの能力に特化した人ばかりが集まっていて、むしろ今のシーンよりも個性が豊かだったと思うんですよ。ものすごく韻をかたく踏む人がおって、器用にフロウを操る人がおって、パンチラインで戦う人も、気合いで戦う人もいた。よく晋平太さんが「特殊能力」って言葉を使いますけど、昔のMCバトルは「火の特殊能力」を持っているヤツと「水の特殊能力」を持っているヤツの戦いみたいな感じやったんです。勝敗も「今日は水の日やったな」という感じで。

晋平太:そうだったね。でもR-指定くんは、韻、フロウ、パンチラインといった、すべての能力が高かったんですよ。能力を五角形とか六角形で表すと、全部がほぼマックスで、面積がメッチャ広いというか。

R-指定:俺は「これ」という特化した能力がなかったから、全部の要素を取り入れようと思ったんです。「みんな全部できないとアカン」みたいな空気ができたのは、俺らの世代の特徴で、その空気は良くも悪くも俺が作ってしまったのかな……というのは感じますね。

晋平太:そのぶん、それ以降の世代は個性を出しづらくなっただろうね。

R-指定:出づらくなりましたね。今は「全体的に能力が高くないと勝てない」みたいな感じですから。

晋平太:そんな空気の中で、見る人の記憶に残るラッパーになるって、難しいんだよ。

R-指定:逆に言うと、今こそ「ひとつの能力に特化する」みたいな戦略をとるのはアリかもしれないですね。一個しか特徴がなかったら、絶対に目立つから。

晋平太:すんげー金持ちキャラのAmateras(アマテラス)※とかね。「お前は言葉の重みで勝負してんのか。俺は財布の重みだ」みたいなラップばかりで(笑)。
※慶応大学在学中のラッパー。MCバトルでは金持ちキャラを売りにしたセルフボースト(自己賛美)が武器

R-指定:それ、おもろいっすね(笑)。

晋平太:やばいっしょ? 「お前が着てるシャツとは値段のゼロが2個くらい違う」「握手はよそう。貧乏が伝染る」とか言われて、俺、負けたから(笑)。

R-指定:メッチャおもろい!

晋平太:でも、そこまでやらないと、やっぱり記憶には残りづらい。彼は上手いんだけど、そのアティチュードでひたすら押してくるのが新しかったね。

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不良っぽい言葉は「普段使わへんな」と気づき…

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フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩

UMB2連覇の実力派ラッパー・晋平太による、日本初のフリースタイル・ラップの入門書。ここに掲載したR-指定との対談の完全版も収録!

助演男優賞

Creepy Nuts(R-指定&DJ松永)のNew Mini Album が 2017年2月1日リリース。




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