更新日:2022年08月21日 11:42
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薬や医療器具も買わせてもらえない自衛隊病院の悲劇

 どういうことかというと、自衛隊の病院も民間人を見ることができればいいのですが、近隣の医療機関との協定で民間人の診療をしないことになっている場合が多いのです。たとえば10万人都市にある医療機関なら、10万人の受診する可能性があるわけですが、自衛隊病院はそこの土地の駐屯地や基地にいる自衛隊員のみが潜在的な顧客となります。圧倒的に守備範囲が狭い。さらに自衛隊員って超健康で体を鍛えている人が多いのでなかなか病気にならない。臨床件数が本当に少ない病院なのです。 薬や医療器具も買わせてもらえない自衛隊病院の悲劇 また、一般医大を卒業した多くのお医者さんたちは若いうちは病院に勤務しながら、いろいろな医療機関の当直などのアルバイトをします。研修するにしても多くの症例を見ることができますし、技術をもった先輩医師も多い。あちこちの医療機関で修業を積むこともできるのでさまざまな経験を積み医者として自信がもてるように成長するわけです。 「民間医はアルバイトができる!」ここが防衛医大の医師との違いです。  一方、自衛隊の医師は公務員です。だから、兼業などのアルバイトは許されません。自分の所属する自衛隊病院に患者さんがいなければ、アルバイトをしてほかの医療機関で経験を積むことができれば医療技術の向上チャンスもあるのですが、その道も閉ざされています。  だから経験を積んでない医師や看護婦ばかりいる自衛隊病院は怖いと現役隊員もしり込みしてしまう悪循環が起こります。タダほど怖いものはない……。  看護婦も注射や点滴ですら経験不足なので、さまざまな悲劇が起こるわけです。
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健康診断の採血での悲劇
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……


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