更新日:2017年05月15日 19:02
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千代田区長選直前に知っておくべき「東京の敵」とは?――猪瀬元都知事が緊急提言

――千代田区長選を狙い撃ちするかのように、内田、森の両氏を批判する本を出版した意図は。 猪瀬:「盛り土問題」や「政党復活予算」など、都政の課題がメディアでも取り上げられるようになったのは都民にとってもよかったと思うのですが、その一方で、東京が抱える問題の「本質」からは少しずつズレてきている。小池都政になって初めて浮かび上がってきた多くの問題を、作家として、ここで一度立ち止まって整理してみようと思い一冊の本にしたためたのです。昨年の都知事選直前、僕がネットメディアを通じて行った一つの問題提起は、選挙の結果を左右するほどの大きな反響があった。「都議会の“ドン”」への恨みを遺書に託し’11年に自ら命を絶った樺山卓司都議の無念の死の裏側には一体何があるのか? 小池都政が誕生し、深い闇に包まれた都議会の「ブラックボックス」に光を当てたことで、少しずつだがその実態が見えてきました。五輪予算の焼け太り、新国立競技場のリスタート、豊洲新市場の盛り土問題……誰も責任を取らなかったこれらの問題はなぜ起きたのか? 誰が意思決定をして、その裏で誰が得をしているのか? そして、東京の真の「敵」は一体誰なのか? こういった問題を一つひとつクリアにする必要があったのです。 ――千代田区長選は、小池都知事と「都議会の“ドン”」の代理戦争という構図だが、見通しは? 猪瀬:もし、小池都知事の推す石川候補が、“ドン”が後ろ盾になっている与謝野候補を「大差」で破ったら、敢えて汚い言葉を使いますが、「馬糞の川流れ」状態になるのは必至でしょう。「馬糞の川流れ」とは、今から20年以上前に自民党の金丸信副総裁(当時)が“永田町ムラ”を揶揄した言葉で「元々どうにもならない烏合の衆は、川に流されたら水の中でバラバラになってしまい、再び一つには戻れなくなってしまう」といった意味です。すでに、都議会公明党が小池支持を表明し、都議会自民党からも会派離脱組が続出していますが、“ドン”の推した候補が「惨敗」するようなら、一気に小池都知事に人が流れることになるはず。 ――千代田区長選公示前日の28日には、小池百合子東京都知事が主催する政治塾「希望の塾」が開かれ、7月の都議選に擁立する候補者を育成するための対策講座が始まっている。すでに、小池都知事は都議選に向けてどんな次の一手を打ってくるのか。 猪瀬:公明党が小池都知事に寝返ったことで3月の予算は通りますが、7月の都議選で多数派を占めない限り、その後の4年間は何も動かない。政局を乗り切らなければ政策に繋がらないわけですから、7月の都議選に向けてその答えを一つずつ出していかないといけない。そういった意味で、千代田区長選は今後の試金石と言っていい。「馬糞の川流れ」が起きれば「都議会の“ドン”」の力は弱まる。そうなれば、もう一人の“ドン”に意識を集中できる。実は、’64年の東京五輪のとき、事務総長と会長が衝突して喧嘩両成敗で辞めており前例はあるのです。これほどまでに次々と大きな問題が生じているにもかかわらず、説明責任も果たさず居座り続ける“ドン”は、小池都政を阻む東京の「敵」であることは間違いない。 <取材・文・撮影/山崎 元(本誌)> ※このほか、1月31日発売の週刊SPA!2月7日号では、豊洲新市場の地下から基準値の79倍のベンゼンが検出されたことで、石原慎太郎元東京都知事の責任問題が再燃している問題などを猪瀬氏が語り下している。 【猪瀬直樹】 1946年長野県生まれ。1987年に『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2002年、小泉純一郎首相の下で道路公団民営化委員に就任。2007年より石原慎太郎東京都知事の下で副知事に就任。2012年、東京都知事に。13年に都知事を辞任した後に、大阪府市特別顧問に。現在、日本文明研究所所長も務める
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※猪瀬直樹氏講演情報
日本文明研究所 2017 第7回シンポジウム〈特別対談〉
猪瀬直樹 × 磯田道史(歴史家)
磯田道史と語る江戸のイノベーション ~「直虎」以降、改革者の系譜
2017年2月7日/19時~21時(18時30分開場予定)/日本経済大学東京渋谷キャンパスホール
http://japancivilization.org/

東京の敵

都議会のドン、東京五輪、豊洲移転…東京の問題の本質を元知事が解説


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表紙の人/ 橋本マナミ

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