プレゼントというのは、そもそも相手の善意ですから、いちゃもんをつけるほうがお門違い……ではあるんだけど、カップル間の誕生日プレゼントになると、だいたい同じ金額のものを贈り合うわけで、やっぱりそうも言ってられないのが人ってもんで。 「付き合い始めの頃、ディズニーに行ってぬいぐるみ買ってあげたら、えらい喜んでたんだよね」と彼。 　おお、これは逆に彼女の「ぬいぐるみ好き」の信憑性がだいぶ怪しくなってきた。付き合い始めにぬいぐるみを買ってもらって嬉しいってのは本当だと思うんですよ。家に彼に買ってもらったぬいぐるみがあるってのは、なんか女の子扱いされてる感じがして、ぬいぐるみ好きじゃなくても嬉しかったりするので。でもそれは1個でじゅうぶんで、何個もいらない……。 「彼女自身も自分でぬいぐるみ買ったりしてるの？」と聞くと「それはないかも」とのことで、さらに雲行きが怪しい。でも、彼に「毎年ぬいぐるみのプレゼントがいやだ」とも言えないんだな……。そんなふうに決めつけて、心の中で「あ～あ、彼女かわいそう」と思っていたら「あ、ぬいぐるみがプレゼントって痛いって思ってるでしょ。でも、俺の彼女はほんと喜ぶんだよ」と、私の心を見抜かれてしまった。 　いわく「ちょっとヤバいけど、ぬいぐるみに話しかけたりしてさあ、子供っぽいんだよね」とか。 　このとき「あ、そういうプレイのための道具か」と納得したわけです。彼女はぬいぐるみが好きなんじゃなくて、ぬいぐるみを子供っぽく喜ぶ自分と、それを見て喜ぶ彼が好きなんですね。SMが好きな人が、手錠自体が好きなわけじゃないみたいに。ってことで今回は完全に私の余計なお世話だったわけで、安直に「ぬいぐるみはがっかりアイテム」とも言えないもんだなと。プレゼントって奥が深いなと思ったのでした。 【犬山紙子】 エッセイスト。単行本デビュー作『負け美女』（マガジンハウス）で注目を浴びる。著書に『高学歴男はなぜモテないのか』（扶桑社新書）ほか。TVでは『スッキリ!!』ほかでコメンテーターとして活躍中 ※「痛男！」は週刊SPA！にて好評連載中