更新日:2022年08月25日 09:51
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熊本地震から1年 南海トラフ地震カウントダウンで再び注目の「週刊MEGA地震予測」

 実は、村井氏はいわゆる「地震の専門家」ではない。むしろ、「測量工学の世界的権威」として名を馳せた研究者だ。にもかかわらず、なぜ「怖いほどよく当たる」と評されるに至った「週刊MEGA地震予測」をリリースし続けられるのか。 「もっとも大事なのは、地球は常に動いており、その上に乗っている日本列島も今現在、刻一刻と動いているということ。ところが、専門家は過去の地震の記録を分析することで地震を予知しようとしている……。人体の健康に例えれば、過去の病歴だけを材料に、将来の患者の病気を予測するようなもので、どうしても無理があるわけです。我われは、まったく異なるアプローチで地震を予測しています。地球が今どのように沈降、隆起、あるいは水平移動を行っているか、いわば現在の地球の“健康診断”をして、将来に地震という“病気”が起きるかを予測するのです。  また、現在の地震学では、地球上に地震計などのさまざま計測機器を設けているが、この計器は地震が起きたときに地面と一緒に動いてしまう……。新幹線に乗っている人が、新幹線が何メートル動いたのか測ることができないのと同じ理屈で、人は新幹線から降りないと、新幹線の動きは測れません。地球の動きを知るには、地球の外から測るしかありません。だから、人工衛星を用いて地球の外から測量することが重要なのです」  現在の地震学の「限界」を、村井氏は専門の測量工学を武器に突破しようとしているのだ。  ただ、村井氏が有用だとして活用している国土地理院の電子基準点のデータは、1日の地殻変動の平均値であり、通常は2週間遅れと“過去”のデータだという……。 「非常に役に立っていますが、データが上がってくるのが早くても2日遅れで、これではリアルタイムで地殻の変動がわからない……。そこでNTTドコモの支援を仰ぎ、東海、東南海をより高い精度で監視するためにこのエリアに電子観測点を設置しており、3月中には完成する見込みです。すでに日向灘、室戸岬、潮岬、志摩半島、さらに関東では小田原、三浦半島では完成しており、5月には稼働します。これにより高精度の予測が可能になります」  異常な地殻変動の監視網が強化された暁には、これまで以上に正確な地震の予測が可能になる。今、水深4000メートルの海底に横たわる南海トラフでは、いったい何が起きているのか。 「陸上での地殻の変動を見てみると、中国地方、四国地方は南東に動いており、日本全体も同様に動いています。ところが、海上保安庁が設置した海底基準点の南海トラフ沿いのデータを見ると、陸上が南東方向に動いているのに海底では北西方向と、まったく逆方向に動いている。つまり、陸と海の地殻がお互いに押し合っているのです。その結果、南海、東南海エリアでは水平方向の動きが少なくなっている。重要なのは、動きが少ないから安全というわけではないということです。陸と海の地殻が押し合っているから、動くに動けないのです。この均衡状態が弾ける寸前まで、地殻の歪みが溜まっていくと理解すべきでしょう。そして実に怖いことに、水平方向の動きがほとんどない地点をトレースしていくと、南海トラフと並行する“ベルト地帯”がきれいに浮かび上がるのです……。現在の均衡はたまたま成り立っているもので、いつかは崩壊する。崩壊時に放出されるエネルギーは、莫大なものになる。そのとき、南海トラフ地震が起きるのです」  南海トラフの“Xデー”は確実に近づいているように感じるが、村井氏の「地震予測」の重要性が日に日に高まっているのは間違いない。<取材・文/日刊SPA!取材班> 村井俊治氏●JESEA地震科学探査機構(http://www.jesea.co.jp/)・取締役会長。東京大学名誉教授。専門は測量、空間情報工学。国際写真測量、リモートセンシング学会、日本測量協会の会長を務めるなど、世界の測量界を牽引。5万人以上の会員に『週刊MEGA地震予測』および『nexi地震予測』を配信中
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