更新日:2019年08月30日 19:01
ライフ

自衛隊員はボロボロ!? 潜水艦乗組員は休みもナシで長時間勤務の無限労働地獄に…

労基適用外の恐怖、破綻寸前の潜水艦の無限労働地獄

海上自衛隊HPより引用

 1月23日、神戸において潜水艦せとしおの艦内作業中、20代の隊員が機械に巻き込まれ事故死しています。この若い隊員は入籍し、結婚式を間近に控えていたと聞きます。ご家族の気持ちを考えるといたたまれない気持ちになります。  自衛隊は、ほかの省庁と比較しても自殺や訓練中に心筋梗塞などの事故死が多いのですが、労働基準法適応外という隠れ蓑があるために過酷な長時間労働を強いる構造があったのではないでしょうか?  これまで潜水艦で自殺や心筋梗塞などの病気が起こった場合もその過酷な勤務体系との因果関係を騒がれることはありませんでした。病気で病院に行きたいと考えても、休みがなく病院に行くチャンスを逃します。正当な権利である代休を取りたいと申し出ようとしても、ただでさえ人員不足で当直の変更やそれによるほかの隊員への負担が大きくなるという感情を抱き、我慢している隊員が多いのではないでしょうか。病院で診察することがなかなかできないために何か不調があっても診断されることがなく身体がボロボロになっていくのではないかと心配になります。  潜水艦や水上艦などの船には常時医者がいて、薬なども十分積んでいるだろうと一般の人は考えますが、潜水艦には医者はいません。准看護師の資格を持った隊員がいるだけですし、緊急時に必要な薬の投薬もありません。だから長期航海時には適切な医療を受けることができません。医師を乗船させる予算など海上自衛隊にはないのです。  潜水艦勤務は長期間の航海もあり、水上航行以外は長く外も見えない狭い空間に耐えなければならない過酷な仕事です。  航海中だけが苦しいわけではありません。防衛省の募集要項では土日が休みで年次休暇があるとされていますが、潜水艦では、土日の両方が休みになることはほとんどありません。制度としての休みはあっても、埠頭に接舷しているときに全員が帰宅する事は出来ず、最低限の隊員を常時当直として残さなければなりません。その24時間勤務の当直が明けてもそのまま引き続き通常勤務です。当直明けの代休などはありません。つまり30時間以上の長時間勤務の後に代休取得もままならないわけです。代休や有給休暇の買取り制度もありません。消化できない休みは捨てることとなります。  長い航海中ももちろん土日の休みはありません。代休として休みは溜まっていく一方です。職場の都合を優先する事から制度上の休みを取ることがなかなか難しいのです。休みなしの無限労働ということです。しかも合法なので労基は助けてくれません。  これを改善する道はただ一つです。在日米軍の原潜が採用しているように潜水艦1隻に対し2クルー制にする。航海が終われば別のクルーと総入れ替えをして休暇を取るのです。休みを取れない人員削減によるコストダウンをやめて、その過酷な仕事に見合う給与でたくさんの人員を募集し2交代制を実施するのです。それ以外に手はありません。国防上もっとも重要なセクションがカツカツのギリギリで今にも破綻しそうでは困ります。  潜水艦勤務の人も次々と倒れ、離職し、いずれ潜水艦の運用そのものができなくなるのではと危惧しています。潜水艦が運用できなければ日本の航路の安全は保障できなくなります。つまり、東京陥落は目の前なのです。<文/小笠原理恵>
おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot


自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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