更新日:2022年09月25日 11:21
スポーツ

甲子園 優勝候補は軒並み10人以上が「野球留学生」――第99回夏の甲子園

 夏の風物詩とも言える、第99回全国高校野球選手権大会が開幕した。今年は99回目だが、出場している2000年生まれの2年生たちが、来年「100回記念大会」を迎える、“ミレニアムイヤー”前年となる。  “怪物”清宮幸太郎(早稲田実業)が西東京大会で敗退し、注目の選手はいい意味で分散された。春夏連覇を狙う、優勝候補の最右翼大阪桐蔭は、そのミレニアム世代が牽引する。  50メートル5秒7、俊足巧打の藤原恭太、投手としても活躍する“二刀流”根尾昴、大阪大会で逆転満塁本塁打を打った三塁手山田健太はいずれも2年生だ。  その牙城を崩すのは横浜(神奈川)か秀岳館(熊本)かと言われるが、その両校は大会第4日の1回戦でいきなり相まみえることが決まり、大きな話題となっている。横浜は神奈川大会で5本の本塁打を放った主砲の増田珠(3年)に注目が集まる、また、コンゴ人の父を持つ万波中正や、エースの板川経矢など、ベンチ入りメンバーの過半数が1、2年生というフレッシュさも話題だ。  一方の秀岳館は春夏4期連続で甲子園出場、3大会連続ベスト4の“超実力校”だ。チームの看板は2枚の実力派左腕。140km台後半の速球を投げる、川端健斗(3年)、田浦文丸(3年)はともにドラフト候補だ。なにかとお騒がせな、元NHK解説者の鍛治舎巧監督が今大会での勇退を大会直前に発表。選手たちは悲願の全国制覇に燃えている。

県外留学生がいなければ甲子園優勝は困難?

 そんななか、昨今の部員減少問題と同様に、毎年議論となるのが甲子園常連校などが、県外から選手をスカウトなどして集める「野球留学生」問題だ。親の転勤、通学の利便性など近隣県での「越境」もあるが、参加チーム(選手減少などにより合同チームを組む学校も多くなっており、ここでは“チーム”表記する)数の多い、関西や首都圏から、東北や山陰に越境する選手が多いことは知られており、高校野球ファンならずとも議論の的となっている。また、甲子園で“強豪”として数えられる高校の多くが、県外の有力選手をスカウティングしていることも知られている。  2012年から日刊SPA!が調査、掲載した記事には様々な意見を頂いている。調査を続けた第95回以来、甲子園出場校に限っていえば「留学生」は毎年増加の一途を辿っている。今年に限って言えば、ベンチ入りの39%が県外留学生と顕著になっている。以下の記事とデータは各都道府県の代表校のベンチ入り18人の選手のうち、県外出身者の占める割合を表したものである。  予選参加チームが多い愛知(188校)神奈川(189校)大阪(176校)や最少の鳥取(25校)では明らかな“格差”が生じていることや、こうした「留学生」が各地域のレベルを押し上げていることも鑑みて、以下のデータをみていただきたい。 ●2017県外出身者人数(ベンチ入り18人のうち) ※学校名[出場回数](参加地域/公私立/予選参加チーム数):県外者人数[出身中学県](部員数)★印は夏の甲子園優勝経験校 [なし]7校(昨年9校) 滝川西[19年ぶり3回目](北北海道・市立・94チーム)0人(部員54人) 前橋育英★[2年連続3回目](群馬・私立・65)0人(69人) 彦根東[4年ぶり2回目](滋賀・県立・51)0人(71人) おかやま山陽[初出場](岡山・私立・59)0人(97人) 三本松[24年ぶり3回目](香川・県立・38)0人(52人) 東筑[21年ぶり6回目](福岡・県立・134)0人(63人) 波佐見[16年ぶり3回目](長崎・県立・57)0人(67人) [1~5人]16校(昨年13校) 作新学院★[7年連続13回目](栃木・私立・61)1人=群馬1(部員93人) 高岡商[2年ぶり18回目](富山・県立・47)1人=岐阜1(69人) 坂井[初出場](福井・県立・30)1人=京都1(67人) 聖心ウルスラ[12年ぶり2回目](宮崎・私立・49)1人=大阪1(55人) 興南★[2年ぶり11回目](沖縄・私立・63)2人=大阪1 福岡1(130人) 松商学園[9年ぶり36回目](長野・私立・85)3人=大阪2 東京1(104人) 藤枝明誠[初出場](静岡・私立・112)3人=愛知3(67人) 中京大中京★[2年ぶり28回目](愛知・私立・188)3人=三重2 岐阜1(87人) 京都成章[19年ぶり3回目](京都・私立・77)3人=滋賀1 和歌山1 兵庫1(85人) 鳴門渦潮[9年ぶり7回目](徳島・県立・31)3人=大阪1 奈良1 兵庫1(60人) 北海[3年連続38回目](南北海道・私立・100)4人=大阪4(94人) 日大山形[4年ぶり17回目](山形・私立・49)4人=宮城1 北海道1 秋田1 東京1(84人) 青森山田[8年ぶり11回目](青森・私立・63)5人=茨城2 神奈川2 東京1(94人) 津田学園[初出場](三重・私立・63)5人=兵庫3 福井2(67人) 神戸国際大付[3年ぶり2回目](兵庫・私立・162)5人=滋賀1 徳島1 京都1 大阪1 岐阜1(106人) 智弁和歌山★[2年ぶり22回目](和歌山・私立・39)5人=大阪2 滋賀1 兵庫1 奈良1(32人) [9人以下]9校(昨年12校) 仙台育英[2年ぶり26回目](宮城・私立・69)6人=秋田1 福島2 東京1 神奈川1 兵庫1(119人) 広陵[3年ぶり22回目](広島・私立・90)6人=大阪2 兵庫2 岡山1 福岡1(142人) 済美[4年ぶり5回目](愛媛・私立・60)6人=神奈川2 大阪1 京都1 奈良1 広島1(47人) 聖光学院[11年連続14回目](福島・私立・78)7人=東京4 神奈川2 宮城1(125人) 木更津総合[2年連続6回目](千葉・私立・168)7人=神奈川3 東京2 岐阜1 静岡1(61人) 開星[3年ぶり10回目](島根・私立・25)7人=大阪2 鳥取2 広島1 和歌山1 兵庫1(85人) 下関国際[初出場](山口・私立・60)7人=広島4 福岡3(45人) 日本文理[3年ぶり9回目](新潟・私立・84)8人=富山3 東京2 茨城1 埼玉1 兵庫1(109人) 土浦日大[31年ぶり3回目](茨城・私立・98)9人=東京5 千葉2 埼玉2(83人) [10人以上]17校(昨年14校) 横浜★[2年連続17回目](神奈川・私立・189)10人=栃木2 長崎1 東京1 千葉1 静岡1 北海道1 福島1岐阜 1福井1(65人) 明豊[2年ぶり6回目](大分・私立・45)11人=大阪4 奈良2 千葉1 山口1 広島1 和歌山1 福岡1(83人) 神村学園[5年ぶり4回目](鹿児島・私立・73人)11人=兵庫2 宮崎2 熊本2 沖縄2 福岡1 長崎1 佐賀1(61人) 名桜[8年ぶり9回目](秋田・私立・47)12人=和歌山5 大阪3 岡山3 奈良1(73人) 花咲徳栄[3年連続5回目](埼玉・私立・156)13人=東京5  大阪2 群馬1 千葉1 神奈川1 新潟1 栃木1 兵庫1(137人) 二松学舎大付[3年ぶり2回目](東東京・私立・134)13人=千葉5 神奈川4 茨城1 埼玉1 長野1 静岡1(66人) 山梨学院[2年連続7回目](山梨・私立・36)13人=神奈川3 千葉2 埼玉2 大阪2 山口1 長崎1 栃木1 岐阜1(66人) 大阪桐蔭★[3年ぶり9回目](大阪・私立・176)13人=滋賀2 奈良2 兵庫1 愛知1 和歌山1 広島1 岐阜1 佐賀1 和歌山1 三重1 徳島1(63人) 明徳義塾[8年連続19回目](高知・私立・28)13人=大阪4 香川2 岡山2 愛媛1 兵庫1 徳島1 熊本1 福岡1(134人) 盛岡大府[2年連続10回目](岩手・私立・68)14人=神奈川5 大阪4 東京2 福島1 宮城1 栃木1(121人) 天理★[2年ぶり28回目](奈良・私立・40)14人=大阪10 京都1 兵庫1 愛知1 東京1(77人) 日本航空石川[8年ぶり2回目](石川・私立・49)15人=兵庫8 大阪2 奈良2 岐阜1 愛知2(130人) 米子松蔭[17年ぶり3回目](鳥取・私立・25)15人=大阪7 京都3 兵庫2 奈良2 島根1(71人) 東海大菅生[17年ぶり3回目](西東京・私立・128)16人=愛知6 神奈川5 千葉2 宮城2 埼玉1(136人) 大垣日大[3年ぶり4回目](岐阜・私立・68)16人=愛知11 石川2 和歌山1 滋賀1 三重1(55人) 早稲田佐賀[初出場](佐賀・私立・41)16人=福岡12 鹿児島1 埼玉1 長崎1 愛知1(47人) 秀岳館[2年連続3回目](熊本・私立・63)17人=福岡4 京都4 大阪3 佐賀3 沖縄2 岡山1(100人) ●都道府県別、県外出身者(=総数348人 49代表ベンチ入り選手18人の39% ※前前年=283人) ・大阪=58人 ・神奈川=28人 ・兵庫=27人 ・東京=26人 ・愛知=25人 ・福岡=24人 ・千葉=14人 ・京都=11人 ・和歌山=10人 ・埼玉、岐阜=8人 ・広島=7人 ・滋賀、岡山=6人 ・宮城、栃木、茨城、佐賀=5人 (4人以下は省略) ※ちなみに県外出身者を排出していない代表校の県は以下のとおり 青森、岩手、山形、高知、大分 ※大阪府出身中学球児は今大会58人で、49代表ベンチ入り18人の約7%を占める 参考「週刊朝日増刊 甲子園2017」<取材・文/日刊SPA!高校野球取材班>
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