晋平太が語るMCバトル論「自分で恥ずかしいと思うようなラップは一度もしたことない」
「収録の少し前の時期に、友達のMC正社員(戦極MCBATTLE主宰)に頼んで、渋谷の『FAMILY』というハコで30人のラッパーとのバトルをする『30人組手』をやったんです。そこで長いバトルを経験できていたのはデカかったですね。大阪のラッパーのじょうは、交通費自腹でわざわざ来てくれて。のっけから本気でディスりまくった挙句、『フリースタイルダンジョン頑張ってください』の一言もなく帰っていきましたけど、じょうを始め相手してくれたMC全員はもちろん、三十人組手に関わってくれた人、全員に超感謝してます」
「すごいバトルを見てしまった……」。それが、この日の観客が口を揃えて述べる感想だ。審査員も涙を流したモンスター5人とのバトル。晋平太は、その反応に感謝しながら、自身も見るのが好きだというボクシングを例に出し、この日のバトルを振り返る。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1377374
「殴り合いを見て感動するのは、ボクサーが死ぬ気で戦っているからですよね。MCバトルも同じだと思うんですよ。今回の『フリースタイルダンジョン』も、モンスターのみんなが本気のラップでぶつかってきて、僕もそれに負けないように必死に戦った。だから感動してくれた人がいたと思うんです。『MCバトルでもスポーツと同じように感動できるんだ』って思う人がいてくれたら、本当に嬉しいですね」
ここまで長く第一線で活躍し、その時期の主要大会を制し続けたラッパーは他にいないが、「MCバトルって簡単に負けますからね。『フリースタイルダンジョン』の収録が終わったあとも戦極MCBATTLEに出場しましたけど、普通に負けてますから。無敗でいつづけることは絶対不可能です」と話す。
また、『フリースタイルダンジョン』でMCバトルに興味を持った人には、ぜひバトルの現場に足を運んでほしいという。
「今はどんな地域でも、近くの大きな街にはHIPHOPのシーンがあるはずだし、MCバトルもやっている。それこそ僕が司会をしてたUMBは全国48か所で予選をやっていますし、テレビに出ていなくてもヤバいラッパーは全国に沢山います。もちろん戦極MCBATTLEのような有名なラッパーが出ている大会を見るのも面白いと思いますよ」
大事なのは、現場で大会の最初から1日の流れを見ることだ。
「YouTubeだと1試合ごとのブツ切りが普通で、『なぜこの人が優勝したのか』という1日の流れやドラマが見られない。だから決勝戦の映像だけ見るのって、推理小説のオチだけ見ているようなものなんです」
今回の『フリースタイルダンジョン』の収録を筆者は現場で見ていたが、確かに生でしか体感できない空気感がわかった。サイプレス上野が持ってきた菊の花を蹴り飛ばして、勝利したあとに生まれた「やっぱ晋平太ヤベぇな」という会場の空気。漢とのバトルで沸き起こった、安堵や賞賛の拍手。T-Pablow戦では、おそらく晋平太以上に観客が動揺し、ざわめいていた。そして、壮絶なバトルを制し続けた晋平太を後押しする雰囲気は、時間を追うごとに高まっていた。
「それが会場の空気ってやつで、映像では全部は伝わらないんですよね。ラッパーの出しているバイブスも、画面にはなかなか映らないですから」
MCバトルには、生観戦でしか体感できない面白さがある。そして、「スポーツと一緒で、見て応援するのも超楽しいけど、みんなでやるのも超楽しいっすよ」と晋平太。“日本一のフリースタイルバカ” “フリースタイルの伝道師”と自称する彼は、『フリースタイル・ラップの教科書』という本を発表したり、ラップ教室を開催したりと、ラップの楽しさを広める活動もしている。配信限定でリリースしたシングル『主人公』では、「その両輪があってこそ、僕のなかではヒップホップ」という気持ちを混めたという。
「ヒップホップをやっている人も、そうじゃない人も、それぞれが自分の人生の主人公だし、好きに楽しんで生きればいいと僕は思っています。逆に言えば、『俺は俺で楽しみたいから、俺の生き方に文句を言うなよ』ということ。俺以外に晋平太をやってくれるヤツはいないので、俺は全力で晋平太を生きるだけです!」 <取材・文・撮影/古澤誠一郎>
ボクシングと同じようにMCバトルでも感動は生み出せる
「ヒップホップをやっている人も、そうじゃない人も、それぞれが自分の人生の主人公だし、好きに楽しんで生きればいいと僕は思っています。逆に言えば、『俺は俺で楽しみたいから、俺の生き方に文句を言うなよ』ということ。俺以外に晋平太をやってくれるヤツはいないので、俺は全力で晋平太を生きるだけです!」 <取材・文・撮影/古澤誠一郎>
1
2
『フリースタイル・ラップの教科書 MCバトルはじめの一歩』 UMB2連覇の実力派ラッパー・晋平太による、日本初のフリースタイル・ラップの入門書。ここに掲載したR-指定との対談の完全版も収録! |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ